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新規事業の立ち上げには、3Cの視点が有効だと実感した話

プロパンガス一括見積もりサービスenepi(エネピ) は、2018年3月現在では、プロパンガス業界最大の集客サイトに急成長している。2015年秋頃、僕は担当者としてまさにゼロから立ち上げた訳だが、今回はその立ち上げの経緯を振り返ってみたいと思う。

*現在僕は関与していないが、精鋭揃いのenepiチームが粛々とサービスを育てている

電力比較サイトから始まったenepi

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事業立ち上げの経緯

今でこそenepiはプロパンガスの一括見積もりサービスとして確立されているが、2015年当時は、2016年4月から始まる電力小売の全面自由化を見据えて、自社で電気のスイッチイングサービスを創ろうという構想を立てていた。それが今のenepiの原型である。

電力自由化後には多くの小売電気事業者が登場し、各社がそれぞれ独自のサービスメニューを作ることが予想され、それらを比較するサービスのニーズは一定程度あるだろうという想定だったのだ。実際に、イギリスやドイツ、フランスといった既に自由化が進んでいた海外諸国では同様のサービスが数多く生まれていたことも後押しした。

立ち上げの経緯としては、enepiを立ち上げるその1年程前に、新電力登録を行った自社の100%子会社の事業立ち上げを僕が担当していて、電力業界の知見を一定程度は有していたので、その流れでenepi事業の立ち上げを任されたのだと認識している。

プロパンガス業界へのピボット

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スタート当初は、小売電気事業者の電気料金プランは2016年4月直前にならないと公開されない気配があったため、その前にユーザーのアクセスを集めようと、当時流行っていたmeryやiemoのようなキュレーションサイト風に、電気に関する情報を記事形式でまとめていく方針で進めた。

その頃、同様のサービスを行っていたのが、カカクコム社とエネチェンジ社だ。当初はこれらのサービスに負けじと、自分でも大量に記事を書き、また外部のライターさんに執筆を依頼して、1ヶ月で100記事程度アップし、多くのトラフィックを集めていた。

ただ、このまま競合と戦っても勝てないな、という結論に至った

というのも、まずカカクコム社は、ご存知の通りネット業界のSEO最強位プレイヤーだ。ドメインの強さのみならず、システム構成やライティングが非常に巧い。同社のサイトは、SEOのお手本と言えるだろう。

また、エネチェンジ社は、専門性の高い社員たちが全社一丸となって取り組んでいる。かたや、こちらは極めて少人数なわけだ。正直なところ、これでは長期的な視点では勝てそうにない。

また、電力比較サービスの収益性という面でも、やや厳しいと感じた。

主なビジネスモデルは、①電力契約のスイッチングによる成功報酬 ②広告掲載 ③データコンサルなどだ。メインサービスの①は、1件当たり数千円が関の山である。スイッチングの市場規模がどの程度で、その内Web上でスイッチングするユーザーがどの程度で、その中でどのくらいのシェアを取れるかを考えた時、あまり成長しなそうだな、と思ったのだ。

ただ、もともとenepiを電気のスイッチングだけのサービスにするつもりはなく、当然2017年4月から始まる都市ガスの自由化のスイッチングを見据えていた。

そこで、サービスのマネタイズを多角化するためのブレストをメンバーとチャットワークでしていた時、プロパンガスのスイッチングサービスに行き着いたのである。

3C(市場、競合、自社)の視点から、イケると思ったプロパンガス切り替えサービス

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プロパンガスのスイッチングは、いわゆる3Cの視点で、スケールするのではないかと考えた。

市場…日本の全世帯の約4割(2,400万世帯)が利用していて、市場規模は大きく、かつ既得権益が強いレガシーな市場。IT/webの活用により、ディスラプトし得ると予感。

競合…金融、不動産、通信など他の同様の業界には、Yahoo!社やカカクコム社のような比較/切替領域の巨大プレイヤーが存在するが、プロパンガス業界には先行者はいるものの、巨大プレイヤーは存在せず、勝ち目はあると判断。また、調査を深めるにつれ、サービスの創り方でも差別化できると確信。

自社太陽光発電の一括見積もりサービス「グリーンエネルギーナビ」や、リフォームの一括見積もりサービス「リショップナビ」のように、一括見積もりサービスを複数運営してきたことにより、マッチングサービスのノウハウやユーザーベースが蓄積されている。

サービスの創り方については、既存サービスが事業者目線だったのに対して、一括見積もりというユーザーファーストのサービスに設計したという点が、enepiの斬新な部分だと思っている。

と言うのも、従来のプロパンガス業界は、自由料金であるものの、プロパンガス会社が相互に結託し合い、ユーザーにとってガス会社を変更する選択肢が大幅に制限されていた背景があるのだ。

また、悪質なブローカーがはびこっており、これがガス会社の悩みのタネだったという歴史もある。

こういった環境の中、ユーザーが主体的にガス会社を比較検討し、切り替えをスムーズにする土壌を作ったという点がenepiの提供価値である。

新規事業立ち上げのオススメ本

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ありきたりではあるかもしれないが、3Cの視点で事業の立ち上げを考えることは有用だと思っている。

なお、新規事業立ち上げの発想の視点は、ライフネット生命の岩瀬社長の著書『132億円集めたビジネスプラン』に多くの影響を受けていることを付記しておきたい。伸びる事業の3つの視点など、事業立ち上げに非常に有益な示唆を受けることができる、秀逸な本だ。

著書内の「大きく成長するベンチャーの3条件」を引用しておきたい。

①「誰もが日常的にやっていることを対象にせよ」

 →市場が大きいこと 

②「そこで多くの人が不便や面倒を感じていることを対象にせよ」

 →市場に大きな非効率が存在すること

③「その不便さを解消する新しいソリューションが提供できること」

 →技術のブレークスルー、規制緩和などの環境変化があること

132億円集めたビジネスプラン

132億円集めたビジネスプラン

 

実際に電気からプロパンガスにピボットし、プロパンガスの一括見積もりサービスを立ち上げた後でも、仮説検証の繰り返しで、一筋縄ではいかなかったが、その経緯についてはまた別途振り返りたい。

プロパンガスユーザーの方がいらっしゃれば、一度ぜひenepiでお試しにシミュレーションしてみて欲しい。ほぼ確実にガス料金が安くなるはずだ。