【書評】影響力 - あなたがブランドになる日 - (永松茂久)
僕の典型的な休日の過ごし方は、スターバックスへ自転車で行き、気になった本を3〜4冊手に取り、2時間程で読み、その後仕事に着手するというものだ。休日の半分以上の時間をスタバで過ごすことも多い。
もちろん、本を一言一句を読むわけではないが、1ヶ月で読む本は、少なくとも15冊以上になる。せっかくなので、読んで良かったと思う本を紹介していこうと思う。
永松茂久著「影響力」の注目ポイント
- 作者: 永松茂久
- 出版社/メーカー: きずな出版
- 発売日: 2018/06/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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永松茂久さんが書いた「影響力」という本。この方は存じ上げなかったが、何より本のカバーが格好良かったことと、自分自身が影響力をつけたいと思っていたこともあり、手に取ってみた。
著者は「メンターの先生」、つまりメンターになりたい人へのメンタリングやコンサルティングを軸に、幅広く活動されているそうだ。
本書は、著者が影響力を持つに至ったこれまでのターニングポイントを、実体験を元に具体的に記載されているので、参考になる部分が多いと感じた。
主に「メンター業を目指す人向け」に書いている本とのことだが、必ずしもそればかりではなく、影響力を増したいと思う人にとって、何かしらの示唆があるだろう。
以下、特に「強み発見」の項目に関して、気になった内容を抜粋したい。
・あなたが影響力を手に入れることは、あなたが思っているよりずっと簡単です
・影響力=メリット×権威×実績×憧れ×好感度
・まずは自分を明確化する
・自分の仕事を具体的な言葉にする
・「人からびっくりされてあなたがびっくりしたこと」の中に強みがある
・少し目線を変えれば、あなたはすぐにオンリーワンになる
・あなたは何の専門家?
僕がおすすめする、自身の強みの発見方法
個人的には、大学生時代に、当時の師匠(メンター)より、「自分が何屋さんなのか?という問いに対して答えられるようにすべきだ」と言われてきた。いまであれば、「事業開発のプロフェッショナル」としての専門性を追求していきたいと考えている。なお、僕はfacebookではなく、Linkedinを使ったブランディングを意識して行っている。
自分の強みの模索に関しては、就活の頃に行った人も多いと思うが、社会人になってからも継続的に行っている人は少ないかもしれない。その意味では、転職活動は自身の強みを認識する1つのきっかけになるかもしれない。必ずしも転職する必要はなく、転職エージェントや他社の人など、外部からみた自身の価値を評価してもらう機会は、持っておいて決して損はないだろう。
アウトプットすることでチャンスは広がる
また、著者は、影響力をつけるためには、書籍を出版することを推奨しているが、いきなり本の執筆とはいかなくとも、各種SNSやnewspicks、noteやブログ等、何かしらアウトプットできる機会は豊富にある。それを利用しない手はないだろう。
なぜなら、いくら知識や情報をインプットしても、誰も気づかないし、誰も評価してくれないからだ。それよりは、完全な形になっていなくとも、インプットした情報を、自分のフィルターにかけて、何かしらアウトプットした方が、自身へのベネフィットは大きいと思う。個人的には、情報のインプットが大好きで楽なので、それで満足してしまうことも多いのだが…
また、自分の知識や考えをアウトプットしていくことで、新たなチャンスや出会いが生まれるということは、最近よく経験しており、アウトプットの重要性を強く実感している。それについては、別の機会に共有したい。
マイナビエージェントは特に20〜30代向けの求人数が豊富なので、まずは転職市場にどんな案件があるかを調べるためだけでも、有用価値があると思っています。
新規事業の立ち上げには、3Cの視点が有効だと実感した話
プロパンガス一括見積もりサービスenepi(エネピ) は、2018年3月現在では、プロパンガス業界最大の集客サイトに急成長している。2015年秋頃、僕は担当者としてまさにゼロから立ち上げた訳だが、今回はその立ち上げの経緯を振り返ってみたいと思う。
*現在僕は関与していないが、精鋭揃いのenepiチームが粛々とサービスを育てている
電力比較サイトから始まったenepi
事業立ち上げの経緯
今でこそenepiはプロパンガスの一括見積もりサービスとして確立されているが、2015年当時は、2016年4月から始まる電力小売の全面自由化を見据えて、自社で電気のスイッチイングサービスを創ろうという構想を立てていた。それが今のenepiの原型である。
電力自由化後には多くの小売電気事業者が登場し、各社がそれぞれ独自のサービスメニューを作ることが予想され、それらを比較するサービスのニーズは一定程度あるだろうという想定だったのだ。実際に、イギリスやドイツ、フランスといった既に自由化が進んでいた海外諸国では同様のサービスが数多く生まれていたことも後押しした。
立ち上げの経緯としては、enepiを立ち上げるその1年程前に、新電力登録を行った自社の100%子会社の事業立ち上げを僕が担当していて、電力業界の知見を一定程度は有していたので、その流れでenepi事業の立ち上げを任されたのだと認識している。
プロパンガス業界へのピボット
スタート当初は、小売電気事業者の電気料金プランは2016年4月直前にならないと公開されない気配があったため、その前にユーザーのアクセスを集めようと、当時流行っていたmeryやiemoのようなキュレーションサイト風に、電気に関する情報を記事形式でまとめていく方針で進めた。
その頃、同様のサービスを行っていたのが、カカクコム社とエネチェンジ社だ。当初はこれらのサービスに負けじと、自分でも大量に記事を書き、また外部のライターさんに執筆を依頼して、1ヶ月で100記事程度アップし、多くのトラフィックを集めていた。
ただ、このまま競合と戦っても勝てないな、という結論に至った。
というのも、まずカカクコム社は、ご存知の通りネット業界のSEO最強位プレイヤーだ。ドメインの強さのみならず、システム構成やライティングが非常に巧い。同社のサイトは、SEOのお手本と言えるだろう。
また、エネチェンジ社は、専門性の高い社員たちが全社一丸となって取り組んでいる。かたや、こちらは極めて少人数なわけだ。正直なところ、これでは長期的な視点では勝てそうにない。
また、電力比較サービスの収益性という面でも、やや厳しいと感じた。
主なビジネスモデルは、①電力契約のスイッチングによる成功報酬 ②広告掲載 ③データコンサルなどだ。メインサービスの①は、1件当たり数千円が関の山である。スイッチングの市場規模がどの程度で、その内Web上でスイッチングするユーザーがどの程度で、その中でどのくらいのシェアを取れるかを考えた時、あまり成長しなそうだな、と思ったのだ。
ただ、もともとenepiを電気のスイッチングだけのサービスにするつもりはなく、当然2017年4月から始まる都市ガスの自由化のスイッチングを見据えていた。
そこで、サービスのマネタイズを多角化するためのブレストをメンバーとチャットワークでしていた時、プロパンガスのスイッチングサービスに行き着いたのである。
3C(市場、競合、自社)の視点から、イケると思ったプロパンガス切り替えサービス
プロパンガスのスイッチングは、いわゆる3Cの視点で、スケールするのではないかと考えた。
市場…日本の全世帯の約4割(2,400万世帯)が利用していて、市場規模は大きく、かつ既得権益が強いレガシーな市場。IT/webの活用により、ディスラプトし得ると予感。
競合…金融、不動産、通信など他の同様の業界には、Yahoo!社やカカクコム社のような比較/切替領域の巨大プレイヤーが存在するが、プロパンガス業界には先行者はいるものの、巨大プレイヤーは存在せず、勝ち目はあると判断。また、調査を深めるにつれ、サービスの創り方でも差別化できると確信。
自社…太陽光発電の一括見積もりサービス「グリーンエネルギーナビ」や、リフォームの一括見積もりサービス「リショップナビ」のように、一括見積もりサービスを複数運営してきたことにより、マッチングサービスのノウハウやユーザーベースが蓄積されている。
サービスの創り方については、既存サービスが事業者目線だったのに対して、一括見積もりというユーザーファーストのサービスに設計したという点が、enepiの斬新な部分だと思っている。
と言うのも、従来のプロパンガス業界は、自由料金であるものの、プロパンガス会社が相互に結託し合い、ユーザーにとってガス会社を変更する選択肢が大幅に制限されていた背景があるのだ。
また、悪質なブローカーがはびこっており、これがガス会社の悩みのタネだったという歴史もある。
こういった環境の中、ユーザーが主体的にガス会社を比較検討し、切り替えをスムーズにする土壌を作ったという点がenepiの提供価値である。
新規事業立ち上げのオススメ本
ありきたりではあるかもしれないが、3Cの視点で事業の立ち上げを考えることは有用だと思っている。
なお、新規事業立ち上げの発想の視点は、ライフネット生命の岩瀬社長の著書『132億円集めたビジネスプラン』に多くの影響を受けていることを付記しておきたい。伸びる事業の3つの視点など、事業立ち上げに非常に有益な示唆を受けることができる、秀逸な本だ。
著書内の「大きく成長するベンチャーの3条件」を引用しておきたい。
①「誰もが日常的にやっていることを対象にせよ」
→市場が大きいこと
②「そこで多くの人が不便や面倒を感じていることを対象にせよ」
→市場に大きな非効率が存在すること
③「その不便さを解消する新しいソリューションが提供できること」
→技術のブレークスルー、規制緩和などの環境変化があること
- 作者: 岩瀬大輔
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2010/11/16
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実際に電気からプロパンガスにピボットし、プロパンガスの一括見積もりサービスを立ち上げた後でも、仮説検証の繰り返しで、一筋縄ではいかなかったが、その経緯についてはまた別途振り返りたい。
プロパンガスユーザーの方がいらっしゃれば、一度ぜひenepiでお試しにシミュレーションしてみて欲しい。ほぼ確実にガス料金が安くなるはずだ。
元ヘッドハンターが教える、転職目的以外のLinkedInの3つの有益な使い方
LinkedInを日常的に使っている方は、どの程度いらっしゃるだろうか?
LinkedInをもっともアクティブに使っているクラスターは、人材紹介事業者やヘッドハンター、あるいはリクルーターであることに異論はないだろう。
でも、LinkedInは人材業界以外の方にも、とても有益なツールだと僕は思っている。今回は、誰にとって、どんな目的でLinkedInを使うと効果的かを共有したい。
LinkedInは転職目的以外は使えない?
人材紹介事業者等の主な利用目的は、キャンディデイトのソーシングだ。クライアントが求めているハイスペックなユーザーを探し、つながりリクエストを送信し、つながった後は面談に誘うという流れだ。
しかし、人材業界従事者以外では、アカウントは一応持っていても、ほとんどアクセスしない方が多いのではないだろうか。
背景には、
- 日本でビジネス目的でLinkedInを利用しているビジネスパーソンが少なく、
- ビジネスでのコミュニケーションや情報収集ツールが、主にFacebookであるため
という2点が大きいのではないかと考えている。
しかし、本来LinkedInは転職ツールではない。プロフェッショナルネットワーキングサイトである。このネットワーキングの価値は、日本では見過ごされがちだ。そこで今回は、LinkedInのヘビーユーザーの1人である僕が、転職以外の使い方について書こうと思う。
LinkedInの転職以外での3つの有益な使い方
LinkedInでの転職以外の使い方として、大きく以下の3つがあると考えている。
- 新規営業先の見込み顧客獲得
- ステークホルダーとの関係性維持・向上
- 自己ブランディング
それぞれ見ていこう。
ただし、前提として、ターゲットがLinkedInに登録していること、という日系企業/日本人にとっては、現時点で大きなハードルがあることをお忘れなく。
1. 新規営業先の見込み顧客獲得
新規営業先を開拓する際に、どのような手法で行っているだろうか?
担当者へのコールドコール(テレアポ)、会社HPへのメール問い合わせ(web系企業に多い印象あり)、FAX送付、手紙送付、セミナー開催といった手法が挙げられるだろう。
LinkedInは、その新規開拓手段の1つになる。
特に、LinkedInでは所属企業および所属部署を記載していることが一般的だから、「ターゲット企業→ターゲット部署」と検索結果をチェックしていけば、まさに窓口担当者が見つかる場合も多い。
僕の例で言えば、本業でエージェント事業を行っていた際、どうしても開拓したい某大手IT企業D社があったが、HPに電話番号はなく、webサイトからメールを送っても返事はなく途方に暮れていた。
その際、LinkedInをみたら、グローバル人事責任者のアカウントを発見し、つながりリクエストを送信したところ、トントン拍子で話が進み、結果的に本社の人事担当者を紹介して頂き、アカウントを作ることができたのだ。
ベストな手法としては、LinkedIn上で紹介を通じてキーパーソンにコンタクトすることだが、紹介先を見つけて、かつその人に依頼するのも一苦労だ。そうでなければ、ダイレクトアプローチをするしかない。
なお、LinkedInでは、つながりが3次以降になるとつながりリクエストも送れなくなってしまうので、有料プランのInMailを使うか、共通の知り合いを作り2次以内のつながりに接近する必要があることを覚えておきたい。
また、同じグループに所属することでも、つながりリクエストを送信できるようになるので、興味関心のあるグループには積極的に参加しておくと良いだろう。
2. ステークホルダーとの関係性維持・向上
LinkedInはビジネス向きのSNSなので、ウォールに投稿する内容もビジネスネタを投稿する空気になっている。猫や食事の写真を投稿することは避けたい。
ビジネスネタといっても様々ではあるが、単に気になったネタではなく、自分のヘッドラインに沿った内容を投稿していきたい。
取引先や顧客に対しても、投稿した内容が表示されるので、彼らにとって有益な情報となるかもしれない。また、日々の積み重ねで築いた関係によって、新たなビジネスに結びつくこともあるだろう。
何か用件がなければ顧客とも挨拶しづらい場合でも、昔のようにわざわざ用事を作って顧客先に訪問する必要はない。ウォールに有益なネタを投稿し、必要に応じてLinkedIn上でメッセージを送れば十分事足りるはずだ。
3. 自己ブランディング
上記とも関連するが、LinkedInはビジネス上の自己ブランディングに適したツールだ。
自分のプロフィール文章に加えて、ウォールに投稿する内容でも「自分は何のプロフェッショナルか?」という問いに対する答えを、情報として発信し続けると良いだろう。
また、活発に議論が行われているグループでは、ぜひコメントしてみよう。参加者が海外の方の場合が多く、その場合は英語でのやりとりになるが、ネットワークを構築しやすくなるはずだ。
実際に、日々ウォールに投稿していると、ヘッドハンティング的なコンタクトが増えることもあるので、試してみてほしい。
なお、しばらく前からBlog機能がリリースされた。僕はまだ使っていないが、楽天の三木谷さんは良く投稿しているので、興味ある方は参考にチェックしてみてはいかがだろうか。三木谷さんは、グロービスの堀さんと同様に、LinkedInを使いこなしている日本人の1人ではないかと思う。
LinkedInを使ってみよう
僕はLinkedInが日本でももっと普及してほしいと思っているし、特に外資系企業と接点を持ちたい方や、海外展開を検討している方には、ぜひ騙されたと思って一時的に注力して取り組んでみてほしい。
きっとtwitterやfacebookとは違った面白さがあるはずだ。
おわりに:外資系・グローバル企業でのキャリアアップを志向されている方へ
もしあなたが外資系・グローバル企業でのキャリアオポチュニティに関心があるなら、ロバート・ウォルターズは適切なサポーターになるだろう。
ロバート・ウォルターズは、「英語を使った求人」「グローバル人材」に特化している、ロンドン発の大手外資系転職エージェントだ(日本含め、28カ国で展開)。
同社の最大の特徴は、外資系・日系グローバル企業と強いコネクションを持っており、他社エージェントと比べ「英語を使う高収入求人」を多数抱えている点だ。
エグゼクティブクラスの案件も多数保有しているため、若手の方だけでなく50代のシニア層の方もフィットする案件に出会えるはずだ。
実際に転職するかどうかはともかく、外部のポチュニティや自身の評価を知るためにも、「転職活動」は皆がするべきではないだろうか。
当然一切無料なので、一度、ロバート・ウォルターズに登録してみてはいかがだろうか。*登録には、職務経歴書or英文履歴書が必要
なお、LinkedInを転職活動の目的で活用したい場合は、下記記事のご参照を。
【書評】OKRシリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法 OKRの活用法とKPIとの違いを解説
最近、OKR(オーケーアール)という言葉をよく聞くようになった方も多いのではないだろうか。
僕もその1人で、KPI(Key Performance Indicator、ケーピーアイ)の概念に代わるマネジメント手法の1つだと思っていたが、実際はそれが何なのか、どうやって活用するのか、またKPIとの違いが何なのか、いまいち理解できていなかった。
本書『OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法』は、OKRの概念の理解と実践的な活用方法が理解できる、良書だと思ったので、内容を踏まえてOKRの活用方法をご紹介したい。
OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法
- 作者: クリスティーナ・ウォドキー,及川卓也(解説),二木夢子
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2018/03/15
- メディア: 単行本
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OKRとは何か?
OKRを導入している企業の代表格としてGoogleが有名だが、それ以外にもLinkedIn、Twitter、ジンガといったテックジャイアントも導入していることで知られている。日本では、メルカリがOKRを独自にアレンジして導入していることもご存知の方もいるかもしれない。
まず、本書に記載されているOKRとは何か、その基本的な内容を引用したい。
・OKRはObjectives and Key Results(目標と主な結果)の略だ。
・OKRにはある程度標準化された形がある。Oは定性的なものをひとつだけ、KRは定量的なものを3つくらい決める。これらを使って、グループや個人を大胆なゴールに集中させる。
・Oは一定期間(たいていは四半期)のルールを定める。
・KRは、期間の終わりにOを達成できたかどうかを判定するのに使う。
1つのO(目標)と3つのKR(主な結果)を設定するだけなのだから、とてもシンプルで簡単だ。組織の大きさにもよるが、まず全社でOKRを設定した後、全社ORKにもとづいて部署毎・チーム毎にOKRを設定し、最後に個人OKRを設定する流れとなる。
もう少し詳細に、OとKRの設定のコツを押さえておこう。
O(Obective)の設定方法
・定性的で人を鼓舞する内容にする
・時間的な縛りをつくる
・各チームが独立して実行できるようにする
Oの設定は、とにかく組織が1つの目標にフォーカスできるよう、1つのシンプルかつ達成に向けてモチベーションが上がるものにしなければならない。
たとえば、本書の前半はスタートアップの物語となっていて、読者がわかりやすくOKRを理解できるよう解説されているが、その事例では、
外食産業向け食品納入業者に対して、高級茶プロバイダーとして明確な価値を示す
と設定している。
また、原則として、Oには数値は入れないことを、本書では推奨している(ただし、本書解説の及川卓也氏によれば、Google社では運用方法が本書とはやや異なっているとのことだ)。
KR(Key Results)の設定方法
・KRでは、感覚的な言葉を定量化する(数値で表す)
・「どうやってOを満たしたとわかるのだろうか」というシンプルな問いを立てる
・KRの基準は、測れるものなら何でも構わない。たとえば、次のようなものだ。
・成長率
・エンゲージメント
・売上
・性能
・品質
・達成できる可能性は五分五分でなければならない
ポイントは、一定期間後(毎週金曜日、1ヶ月後、四半期後など)にレビューする際、達成できたのか未達成だったのか、測定可能であるということだ。そのために、KRは数値化する必要がある。
ただし、あまり細かな指標を持ち出すべきではなく、あくまでもOを達成するために不可欠な主な結果(=KR)を設定したい。
なお、OKRに関する説明は、下記スライドがシンプルでもっとも分かりやすかったのでシェアしたい。
KPIとOKRの3つの大きな違い
さて、目標管理手法としてKPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)を用いているビジネスパーソンも多いのではないかと思う。そこで、KPIとOKRの違いは何か、それらは両立し得るのかについて考えてみたい。
まず、KPIとOKRの違いとして、大きく以下の3つではないかと考える。
ゴールの設定
KPIのゴールはKGI(Key Goal Indicator, 重要目標達成指標)と呼ばれる場合が多く、その多くは売上目標になっているのではないかと思う。この場合、目標は、予算やノルマと呼ばれることもあるだろう。
具体的には、「今月のKGIはチームで1,000万円だ。内訳はAさんBさんCさんDさん、4名でそれぞれ250万円ずつの予算だ」となる。
一方で、OKRのゴール(O)は、本書の言葉を借りれば「ダイナミックで具体的な形があり、従業員を毎日鼓舞するものでなければならない」というものだ。
イメージとしては、「予算200万円」と言われると、従業員はやる気が出るどころか憂鬱な気持ちになってしまいかねないが、「人材業界で自社の存在感を高める」などと設定すると、やる気が湧いてくるのではないだろうか。
このように、ゴールの設定の仕方が明確に異なっている。
背景にある哲学
ゴールの設定の仕方だけでなく、OKRの背景にある思想・哲学も、KPIとは大きく異なっている。
KPIは、ひとことで言えば、パフォーマンスを定量的に評価する仕組みである。上司が部下の業績を評価するのだから、ベクトルは自然とトップダウンになる。
また、KPIは、細分化しようと思ったら、どんどん指標を細かく設定し、管理することができる。売上目標のKPIは、口頭OK→商談→顧客訪問→アポイント数…という具合に。
場合によっては、1時間当たりのコール数まで管理することもあるかもしれない。しかし、果たしてそれが管理する側もされる側も、ワクワクするような仕事だと思えるだろうか。
ORKは、社員を鼓舞し、個人および組織の能力を高める仕組みである。1つのOに対して3つのKRのみ設定するので、細部の指標は盛り込むことはできない。また、全社OKRは経営陣が主導して設定するとしても、部署毎のOKRはマネジャー・メンバーが議論して設定する。そのため、トップダウンとボトムアップの両方のベクトルになる。
背景には、人に任せる、人の能力を信じるという哲学・思想が横たわっていると考えている。
本書でも、
上長がすべてを把握していることを前提にした、下向きに硬直しきった流れを改めよう
と指摘している。
カバーする主な対象範囲
これまで、KPIは主に営業組織に活用されてきた歴史があると思われる。僕が所属してきた組織でも、事業領域は違えど、営業組織(ビジネスサイド)はすべてKPIで管理していた。
一方で、OKRは、すべての部署に有効だ。とりわけ、もっとも大きな効果を発揮するのはプロダクト・チームだと、本書では記載されている。
プロダクト・チームは、様々な職能のメンバーが集まっている。プロダクトマネジャー、プロダクトデザイナー、データサイエンティスト、各種エンジニア、事業開発など。こういった複雑な職務領域を有するチームをKPIで管理することは困難だろう。
OKRは、チームの共通の目標が明確にすることで、目標達成のために実現すべき結果がフォーカスされ、仕事の優先順位がクリアになり、また他者とのコラボレーションが促進する。こういった点が、OKRが支持される要因だと思われる。
ただし、プロダクト・マーケット・フィット(PMF)が見つかっていない初期段階は、短期的な変化が激しく、目標が二転三転する可能性があるため、OKRの活用は本書では推奨されていない。
OKRの実践方法
ビジネスでの活用方法
四半期タームのOKRを設定したら、その達成に向けて進捗を進めていかなければならない。本書で紹介されているルーティーンは、以下のようなものだ。
・毎週月曜日に、 チームでチェックイン・ミーティングを行い、OKRの進捗を確認し、目標達成に向けたタスクにコミットする
・特に、今週の優先事項として、3〜4つのタスクを挙げ、やるべきことをチームで共有する
・金曜日は「ウィン・セッション(勝者のセッション)」を開催する。ここでは、チームに見せられる成果はなんでも見せあう。たとえば、コードやモック、提携相手の交渉状況や売上の進捗など
・その際、ビールやワイン、ケーキなど、チームの好みにあった飲食物を提供することだ大事だ。チームが必要とされていると感じられるためだ
・ウィン・セッションでは、努めて明るい雰囲気で行うことが重要。そもそも、OKRはは五分五分で達成できそうな高い目標を設定しているので、毎回達成していたら、目標設定が誤っている可能性がある
個人での活用方法
本書の解説で、及川氏は、ORKは夫婦間の関係の改善にも役立つと記載している。これはとても面白い視点だと思った。たしかに、Oを在りたい関係性に、KRをデートの回数などに設定すれば、良い関係が築けそうだ。
副業など、個人プロジェクトや個人の人生にも適用できそうだ。特に僕の場合、往々にして、仕事以外のプロジェクトは継続性が低く、途中で投げ出しがちになってしまう(毎日ブログを書く、等々)。OKRを設定すれば、フォーカスすべき目標と結果を明確にでき、継続性が高まりそうだ。転職活動に適用しても面白いだろう。
まとめ
OKRは、ワクワクする目標の実現に向けて、仕事だけでなくプライベートでも、組織だけでなく個人にも適用可能な、シンプルで強力なツールだと思う。ぜひ使いこなして、在りたい姿(O)を実現していきたい。
弁理士に教えてもらった、事業で役立つ特許の出願方法 & 公開情報を調べる方法
先日、業務の関係で特許の出願方法について調べる必要があり、弁理士に相談に行く機会があった。弁理士の先生に相談するまでは、特許や商標に関する事前知識はほとんどなかったのだが、お話を伺うなかで目から鱗の内容がとても多かったというのが率直な感想だ。
特許や商標に関する知識がない企業は、経営上の大きなリスクになり得る。一部の大企業のように知財部がしっかりしている企業ならともかく、ベンチャー企業にとっては知財分野は「落とし穴」になり兼ねないと思い、備忘録も兼ねて、オープンにできる範囲で共有できればと思う。
*弁理士の話を元に、僕なりに解釈した上で記載しているが、正確性は保証できない旨ご了承いただきたい。また、内容の間違いについては、コメント等でご指摘いただけると幸いだ。
そもそも特許とは何であって、何が特許ではないのか?
特許とは何か?
特許とはどのような概念であるのかについて、まずは原典である特許法および特許庁の解説に目を通しておこう。分かりやすいので、ぜひご一読いただきたい。
ここには、以下のように記載されている。
特許法第1条には、「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする」とあります。
まず、特許とは何らかの発明を行う必要があり、それが発明者の権利として(一定期間)、特許法に基づき保護されるわけだ。
では、どのようなものが発明とみなされる、すなわち特許として保護の対象となるのだろうか?特許庁のHPには、以下のように記載がある。(※太字は筆者)
特許法第2条に規定される発明、すなわち、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものを保護の対象とします。
ここで、大事なポイント、すなわち特許としての要件が3点登場したのが分かるだろうか。「自然法則の利用」「技術的思想の創作」「高度なもの」という3点だ。
上記それぞれの要件に合致する概念が何であるかに言及することは難しい。その場合は、逆の発想で「何が特許の要件を満たさないか?」を検討したい。そうすることで、それ以外は特許である、言えるようになるためだ。
何が特許ではないのか?
特許庁のHPには、特許ではない概念として、以下の3点を挙げている。(※太字は筆者)
- 自然法則の利用でない
したがって、金融保険制度・課税方法などの人為的な取り決めや計算方法・暗号など自然法則の利用がないものは保護の対象とはなりません。
たとえば、「ピザを10分で届けます!」というサービスそれ自体は、特許にならない。それは、人為的な取り決めであるためだ。
また、計算方法や暗号それ自体は、自然法則の利用がないため、特許にならないことにも留意したい。
なお、自然法則の利用について、「自然界の体験を通じた」〜〜
- 技術的思想の創作ではない
また、技術的思想の創作ですから、発見そのもの(例えば、ニュートンの万有引力の法則の発見)は保護の対象とはなりません。
上記のピザの宅配の例で言えば、10分で届けることを実現するソフトウェアやアルゴリズム等は、技術的な思想の創作に合致するとして、特許として認められる可能性がある。
この点で言えば、既存の技術の組み合わせだけであれば、特許にはなり得ないので注意が必要だ。
- 高度なものではない
さらに、この創作は、高度のものである必要があり、技術水準の低い創作は保護されません。
高度の基準はやや曖昧ではあるが、誰でも簡単に創作できてしまうようなものは特許として権利を保護するに値しないということだろう。
特許出願の実務上重要な点は、特許法で権利が守られる対象は、「技術的思想の創作」であるという点だ。つまり、何らかの新しいソフトウェアやアルゴリズム等の開発、設計が必要なのである。
また、特許申請にあたり、必ずしも現時点でサービスやプロダクトがリリースされている必要はない。実際にその技術を使うか使わないかは、特許の要件ではないのだ。その時点では企画段階だとしても、特許の申請を行い、特許を取得することは可能なのである。
それでは、ビジネスモデルは特許を取得できるのだろうか?ビジネスモデル特許という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれない。この点について、声を大にして(タグをH2タグにしてw)お伝えしたいが、
ビジネスモデル特許というものは存在しない
ということである。ビジネスモデル自体が特許の対象となるのではなく、その中の技術的要素が絡んでくる部分が特許として保護され得るのである。そのため、往々にして特許は狭い範囲になる場合が多いのだ。
例えば、名刺情報管理サービスを運営するsansanは、名刺情報を効率よく並べる技術で特許を取得している。しかし、そんなことは特許の中身を確認しないと外見上は分からない。
すなわち、サービスのごく一部の範囲で特許が取得されていたとしても、「特許出願中」などと記載していれば、他社は迂闊に模倣して類似サービスを作ることができず、またユーザーからは何やらすごい技術を用いているのではないか、とアピール効果が期待できるのだ。
他社の特許の確認の仕方
さて、自社で新サービスをリリースする際に、特許出願しておきたい場合があるだろう。その際に、その技術が既に特許として認められているかを確認しておきたいはずだ。その確認方法についてお伝えしたい。
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で検索する
特許情報プラットフォーム(英語名:Japan Platform for Patent Information、略称:J-PlatPat)は、特許庁の外郭団体である独立行政法人工業所有権情報・研修館が運営する、特許情報検索サービスだ。1億件以上の特許権・意匠権等の権利の閲覧が可能な、便利なサービスである。
検索の仕方は、以下の通り。
・特許・実用新案カテゴリー → 2. 特許・実用新案検索
ページ下の方の「検索キーワード」に、検索したいキーワードを入れよう。自身の特許候補に関連しそうなキーワードなどが良いだろう。
また、検索結果が1,000件を超えると中身を表示されなくなってしまう。その場合は、複数のキーワードを入力し、検索方式をORからANDに変更してみると良い。
うまく検索がヒットすると、検索結果一覧に特許がリスト化される画面に遷移するはずだ。項番、出願番号、文献番号、出願日、公知日、登録日、発明の名称、出願人、FIという項目が出てくるだろう。
「人材 採用」での検索結果
気になるタイトルの特許があれば、まずは要約を読んでみよう。ここでその特許の概要が分かるので、自身の特許候補の内容と関連がなければ、読み飛ばしまえば良い。
その下の特許請求の範囲は、特許として保護される権利部分だ。そして、自身の発明と関連する特許があれば、詳細を確認してみよう。
主に、「発明が解決しようとする課題」「課題を解決するための手段」「発明の効果」図面の簡単な説明」と言った項目で整理されていることが多い。
特許出願中とはどういう状態なのか?特許取得までのプロセス解説
なお、よく見かける「特許出願中」についても説明しておこう。特許取得のプロセスは、大きく3つに分かれている。
- 特許出願(特許申請)中
- 特許査定の完了
- 特許権の取得
順番に見ていこう。
1. 特許出願中
特許出願中とは、自身の特許取得になり得ると思われる技術的思想の創作の内容を、書類にまとめて、特許庁に申請した状態だ。
大企業であれば、知財部の担当者が書類を作成し、弁理士を通じて申請するパターンが多いだろう。ベンチャー企業は、発明した担当者が直接弁理士とコミュニケーションをとる場合が多いかもしれない。
この段階ではまだ特許とは認められておらず、あくまでも特許庁による審査中の状態であるが、出願してから1年6ヶ月後に、特許候補として出願内容が公開されるのだ。
2. 特許査定の完了
特許を出願してから、3年以内に審査請求を行わなければならない。もし3年以内に出願しなければ、その特許候補は特許を取得することができなくなってしまう。
もちろん、出願したからといって必ずしも審査が通るわけではなく、特許として認められない場合もある。
3. 特許権の取得
特許庁による審査が完了した状態でもまだ特許権は取得できていない。審査が完了したら、特許料の納付を行うことで、ようやく特許権の取得となる。
なお、出願してから1年半後に申請内容が公開されるが、その後に別の者が出願部分を利用して新たに出願した場合でも、特許としては認められない。特許権は、あくまでも発明する人を尊重しているのだ。
ぜひ特許を作ってみよう
これまで見てきたように、特許出願とは、競合他社にとっては脅威となり、また見込み顧客に対しては優れたサービスだというアピールになり得る。そのため「自然法則の利用」「技術的思想の創作」「高度なもの」という3点を満たしそうな発明があれば、ぜひ積極的に特許申請を行っていきたい。
また、特許そのものが収益を生むビジネスになるかどうかは分からないので、とりあえず出願してみて、3年後にビジネスになりそうであれば審査請求すれば良い、という考え方もできる。
ゲーム会社や電機メーカーなど、特許戦略を重視している企業によっては、特許申請につき数万円のインセンティブが支払われる場合もあるだろう。
余談だが、ゲーム会社でプランナーをしている友人に聞いた話では、ゲーム業界は特許争いが凄まじいらしく、あらゆるところに時限爆弾のように特許が仕込まれているとのこと。たとえば、ゲームのロード中にミニゲームなど動かす技術、beat maniaのように叩く場所と音が連動する技術などなど…。気になる技術があれば、一度特許情報プラットフォームをのぞいてみると、新しい発見があるかもしれない。
特許に関する本はたくさん出版されているので、興味をもち始めた方には、楽しく学べる「知財」入門 (講談社現代新書)がオススメだ。特許の全体像が、具体的な事例とともに分かりやすく説明されている。
転職エージェントの手数料(Fee)はどのくらい?
転職活動は、一種の情報戦とも言える。そのため、転職を行う際に転職エージェントを上手に活用することは、望ましい転職を実現するための有益な手段だと僕は考えている。
しかし、彼らも「人材ビジネス」の一環で行っているのだから、彼らなりの合理的な経済活動の一環でキャンディデイトに接していることを忘れてはいけない。
したがって、転職エージェントとしてのビジネスモデルを理解しておくことは、キャンディで糸自身が冷静な判断をとる上では大事なポイントとなるだろう。
そこで今回は、転職エージェントのビジネスモデルを紹介したい。
転職エージェントが受け取る手数料
一般的に、転職エージェントのビジネスモデルは、紹介したキャンディデイトがクライアント企業へ入社した時点で、紹介手数料が発生する、成功報酬型を採用している。クライアント企業から受け取る成功報酬feeは、初年度の理論年収の30%が一般的だ。ここで言う「理論年収」とは、次の通りである。
理論年収 = 月額固定給×12+賞与算定基準額×前年度実績賞与支給月数
(ただし、年俸制を採用する場合は年俸額を、1年未満の有期雇用契約の場合は契約期間を1年間とみなして換算した額を理論年収とする。)
月額固定給 = 基本給+家族手当+住宅手当+役職手当+その他諸手当
(通勤手当、時間外・休日・深夜労働手当等の割増賃金については含まれない。ただし、割増賃金が固定で支払われる場合には月額固定給に含まれるものとする。)
この「理論年収の30%」という水準には、明確な根拠はない。もともとは、1990年代にインテリジェンス社が中途採用の転職エージェント事業を日本で開始した際に、30%だと決めたことが発端だと言われている。
ただし、リーマンショック時にはクライアント企業も採用意欲が減退する影響を受けて手数料は25%が主流になったり、資金力のないベンチャー企業でも25%が一般的だったり、といった変動はある。
逆に近年は人材不足の影響で、35%が一般的になりつつある。IT系企業では特にその傾向が強いと言えよう。このように、市場環境によって、転職エージェントが受け取る手数料は変動しているのである。
海外の転職エージェントの手数料はどのくらい?
実は、転職エージェントが35%も手数料を受け取っているのは、世界でも日本くらいだ。アメリカのみならず、シンガポールなど東南アジアでは20%程度、下手すると10%代ということもあるようだ。これには、いくつかの理由がある。
- 雇用の流動性が高く、採用しても退職するリスクが高いため、1回1回の採用に多くのコストを支払えない(その代わり、雇用回数は多い)
- 転職エージェント以外にも、多くの採用ツールが存在する(日本のリクナビのようなジョブボードサービスのみならず、craigslistのような情報掲示板、もしくはLinkedIn経由での採用など)
- 海外では、転職エージェント(スタッフリクルーティングと言う)とヘッドハンティングサービスは明確に分かれており、ヘッドハンティングサービスの手数料は高い一方で、スタッフリクルーティングの手数料は低い
総じて、日本の転職エージェント業界は恵まれた環境だと言えるのではないだろうか。
高騰する手数料
転職エージェントが受け取る近年の主流の手数料は35%だとお伝えしたが、実はさらに高まることもある。クライアント企業は、緊急度の高いポジションを募集する際、転職エージェントから推薦数を増やすために、転職エージェントに対して「キャンペーン」を張ることがあるのだ。
実際は、下記のような内容になることが多い。
現在お願いしているポジションの状況アップデートさせて頂きます。また、以下のポジションについては、9月末までの内定承諾で、40%のFeeをお支払いします。
【職種】PM、システムディレクター、アカウントマネージャ、クリエイター、IA、プロダクトセールス、若手エンジニア、社内SE
PMは最終選考にいっている方も数名おりますが、まだまだ数が足りません。
アカウントマネージャーは、最近候補者数が減ってきておりますので、こちらもよろしくお願いします。
このように、期間限定、ポジション限定、あるいは特定の転職エージェント限定で、キャンペーンを張ることがあるのだ。当然、転職エージェントは、キャンディデイトに対して、キャンペーンが張られたポジションを注力して紹介するようになる(笑)。僕は手数料が50%のポジションにて成約実績があるが、やはり注力してキャンディデイトを探し、口説いたものだ。
なお、業界内では有名な話だが、かつて一世を風靡したソーシャルゲーム事業を展開する某大手IT企業では、ソーシャルゲームのエンジニア、プランナーに対して、転職エージェントへの手数料をなんと100%に設定したこともある。
年収600万円のエンジニアが入社決定すれば、なんと手数料は600万円となってしまう!それだけ転職エージェントに支払ったとしても、十分に採算がとれると判断しただろう。逆に言えば、それくらい支払わないと、転職マーケットに人材が不足しており、希望する人材の採用が難しいとも言えよう。
その他のキャンペーンの張り方としては、前四半期で成約実績を残した転職エージェントに対して、手数料をupするという方式もよく見られる。
転職エージェントがゴリ推しする案件は要注意
転職エージェントがオススメしてくる案件の中には、本当にキャンディデイトの志向にマッチした案件もあれば、上記のようにクライアント企業がキャンペーンを張り、手数料が高騰している、転職エージェントにとって「オイシイ案件」も紛れ込んでいるかもしれない。
もちろん手数料のことは誰も教えてくれないので、こう言った裏事情も考慮しつつ、ご自身にとってベストな選択肢を選ぶようにしたいものだ。
なお、 IT・Web業界の転職では、ギークリー社は一目置かれている。某大手転職媒体が主催する「転職決定人数部門」で、ギークリー社はランキングの常連であり、マッチング力に優れていると言えるだろう。
エグゼクティブクラスの案件も多数保有しているため、若手の方だけでなく40代のシニア層の方にもフィットする案件に出会えるはず。実際に転職するかどうかはともかく、外部のポチュニティや自身の評価を知るためにも、転職活動は皆がするべき。当然無料なので、一度ギークリーに登録してみてはいかがだろうか。
元来の恥ずかしがりを克服するために、童貞でホストになった話(後編)
前編では、元来超がつくほど恥ずかしがり屋だった僕が、大学1年時にホストを始めるまでの経緯をお伝えした。後編では、実際にホストをやってみての実体験とその感想を共有したいと思う。
実際にホストをやってみた感想
一言で言えば、ホストで働くことは、体力的な面と金銭的な面で、ものすごくハードだ。大学など、何かとの両立はかなり難しいと言えよう。
僕が勤務していた2005年当時は、現在のホストクラブの営業システムとは違い、深夜(23時頃)にオープンし、朝(8時頃)まで営業というスタイルだった。とは言っても、スタッフの誕生日やクリスマスなど頻繁に行われるイベント時はお店が盛り上がり、昼の12時近くまで働くこともザラにあったのだが…。
勤務当初は自分のお客さんがいないので、まずは新規で自分のお客さんを獲得するためキャッチ活動を行う。今は条例で違法となっているはずだが、当時の歌舞伎町は辺り一面ホストのキャッチで溢れかえっていたのだ。
そこで、女性が歩いていたら手当たり次第声をかける。そのうち、一定の確率で「初回なら行ってみる」という人がいるので、そういう人をお店に連れていくのである。
キャッチは、お店にお客さんを呼ぶか、お店が忙しくなってスタッフから呼ばれるまで続ける。これは夏なら良いのだが、冬は寒すぎて本当にツラい。はなまるうどんや吉野家には、寒さしのぎで何度も立ち寄り、その節は大変お世話になったものである。
ちなみに、キャッチを通じて新規のお客さんをお店に呼ぶことができれば、呼んだ人はそのお客さんを15分程度接客する。その後、別のホストと交代し、15分経ったらまた別のホストと交代…それを2時間経過するまで繰り返します。2時間後、次回来店時に誰を指名するかを選択し(通称:送り指名)、連絡先を交換します。
ものすごくツラかったヘルプ要員
キャッチから戻ってきて新規のお客さん以外はヘルプ要員として接客するのだが、これは相手によってはキャッチよりもはるかに大変だ。
まず、店内は音楽のボリュームが大きく騒がしいため、大声で話さなければ聞こえない(特に、僕は滑舌が悪い)。声の出しすぎで1週間ほど声がまったく出なくなり、欠勤したこともある(医者の診断書を取得し、お店から罰金されないようにした)。
また、ブランデーのようにアルコール度数が高いお酒をひたすら飲ませたがるお客さんもいれば、担当ホスト以外とはまったく話したがらない人もいる。そもそも女性と話して接するのが得意ではない僕にとって、これはものすごくシンドかった。
お酒を飲みすぎて、大学に通学しようと電車に乗ったものの、電車で7時間も寝過ごしてしまったこともあった。カバンがちゃんと手元にあったのは奇跡的である。
なお、当日は金髪・スーツ姿で大学に登校していたので、おそらく近寄りたくない存在だと思われていたはずだ(苦笑)。夜まで大学にいて、そこから新宿まで1時間かけて通い、また朝に大学に通う日々が続き、とにかくハードだった。
売れっ子ホストの特徴
ところで、売れるために周りの売れている先輩ホストを観察したのだが、やはり売れている人には特徴があった。
とにかくマメ
売れている先輩ホストに気に入ってもらい、週末などは新宿近くのその先輩の家に泊まらせてもらっていた。そこで驚いたのは、先輩が寝る前に、必ず毎日10人くらいのお客さんに対して、それぞれ2〜3分の電話を行っていたことだ。会話の内容は営業電話っぽくなく、「最近どうなの?」的なたわいもないものだ。この「気にかけている感」、付かず離れずのマメさが、売れるためには大事なんだなと思った次第である。
イケメンであることは、必要条件ではない
イケメンかどうかは、本質的には重要ではない。というのも、数多あるホストクラブの中には、同じようなイケメンはたくさんいるので、ただのイケメンはその中に埋もれてしまうからだ(もちろん、芸能人顔負けのイケメンは別だが)。
それよりも、他のホストに勝てる自分の強みを磨くことが重要だと思う。たとえば、ギャル受けが良い顔立ちという特徴があれば、ギャルの雑誌を読み込んで周辺知識を身につけるなど徹底的にギャル受けの良さを強化し、「ギャルに対して売れるホスト」になることが得策だ。それ以外でも、面白いことが言えないキャラであれば、下手にツマラナイことを言わずに「癒し系ホスト」としてブランディングするなど、強みの磨き方は様々である。
好きこそ物の上手なれ
僕の1日後に、福島県から上京してホストになった同期がいる。まだ入店して1週間くらいしか経っていなかった時だが、朝に営業が終わって歌舞伎町で一緒にキャッチ(営業)に出かけたある日、彼は僕に「オレにとって、ホストは天職だと思う」と言いました。
彼はいわゆるギャル男の風貌ではなく、どちらかと言うと真面目な感じで、また頭の回転が速い人だった。たしかにイケメンではあるものの、特に際立っている訳ではない。
それでも、すぐに指名本数を増やし、売れるホストになっていったのだ。彼はその後もホストを続け、今では歌舞伎町の有名グループ店の代表として活躍している。
ホストで働いた経験から得た気づき
一方で僕といえば、7か月間も働けば、少しは女性への免疫ができてきて、それなりに会話ができるようになったが、「売れる」とはほど遠い状況だった。その後は、あるベンチャー企業で長期インターンシップを行うことにし、結局ホストは辞めることにしたのだが、振り返ってみると、ホストの経験を通じて学んだことはたくさんあった。
体験、1次情報をもとに判断する
ホストを経験する前は、「ホスト業界=怖い、悪」というイメージが少なからずあったが、実際に経験してみると、少なくとも僕が働いたお店はとてもクリーンであり、また働いている人は極めて真っ当な人だった。
このように、様々なメディアで語られる「イメージ」と事実は異なっている場合がある。自分自身で体験し、情報を解釈し判断することで、自分自身が納得する解に近づくのではないかと思っている。できるだけ偏見は避けたいものである。
環境を変えることで、自分が変わる
もともと恥ずかしがりという性格を克服するためにホストを始めたが、ホストを辞めようと思った頃には、だいぶ自分自身のマインドが変わっているように思えた。
有名な言葉ではあるが、「人間が変わるための3つの方法」として、大前研一さんが以下のように述べている。
人間が変わる方法は3つしかない。1つ目は時間配分を変えること。2つ目は住む場所を変えること。3つ目は付き合う人を変えること。どれかひとつだけ選ぶとしたら、時間配分を変えることが最も効果的。最も無意味なのは『決意を新たにする』ことだ。
恥ずかしがりという性格を治したいと思ったとき、「よし、明日から恥ずかしがりを治そう!」と決意して治るものではない。やはり自分を取り巻く環境を意図的に変えて、自分も変化することが有効だと実感している(荒療治ではあるが…)。
売れる人には理由がある
ホストで売れている人には、明確に理由がある。とにかくノリが良い、キャッチがすごく上手い、ものすごくイケメンなど特徴は様々だが、売れている人は、意識的・無意識的に、それぞれ自分の特徴=武器を研ぎ澄ましているように思う。
そういう意味では、結局僕はホスト修行中もずっと童貞だったので、今思えば童貞キャラを前面に押し出したら少しはエッジが立ったのではないかと、多少後悔している…。
ホストのよもやま話
終わりに、ホストをやってみて面白かったトピックをいくつか書いてみたい。
- 学生ホストは少なからずいる
当時は、歯科系大学や東京大学(しかも医学部!)を始め、私立文系でもホストをやっている人はいた。ほとんどの人が3か月以内に辞めてしまうが、しっかり売れている人もいた。
- アフターのカラオケに付き合って1万円GET
先輩ホストとそのお客さんのアフターに付き合った時のことだ。こんな世界もあるのかと思ったものだ。
- ヘアスタイルが命
キャバクラと違い、ホストのヘアスタイリングは、基本的に自分で行う。髪型は非常に力を入れるべきポイントで、シャワー →ドライヤー → ヘアアイロン → ワックス → スプレー固めという流れで、1時間かけてスタイリングする人もザラにいた。そして、上手くいかなかったらまたシャワーを浴びてやり直しする人も。スタイリングは大事なのである。
- お店の客層は様々
僕が働いていたお店は比較的若めの女性が大半だった。お客さんの職業を聞くことはタブー(業界用語で「爆弾」と言い、罰金300万円という重い罰則があった)であり、分からない人も多くいましたが、大まかには、お水系が半数で、残りはOL、モデル・芸能人の卵、学生、社長夫人・社長令嬢といった客層だった。
結論
10年以上経った今、改めて振り返ってみると、自分にとってこれ以上ないほど辛かった当時の経験だが、今となってはほろ苦い、良い思い出だ。男性が女性をホストに連れて行くパターンもあるようなので、男性の皆様も一度ホストを経験してみるのも悪くないかもしれない(初回は安いため)。
最近気になっている、中毒性のある動画がこちら。ROLANDさんからは強いプロ意識を感じる。
元来の恥ずかしがりを克服するために、童貞でホストになった話(前編)
転職活動を成功させるにあたり、(一部のエンジニア職などを除き)コミュニケーション力が不可欠だが、面接という非日常的な緊張する場で、普段通りのコミュニケーションを行うことは、とても難しい。僕も面接は苦手な方だ。
そもそも、もともと僕は緊張しいというか、かなりの恥ずかしがり屋だった。それでも、今では講演で大人数の前で話すこともあれば、顔が見える少人数のワークショップの講師のような機会もこなすし、また女性との会話も楽しくできるようになっている。振り返ると、このような変化のきっかけは、大学時代にホストで修行したことが影響していると思っている。
赤面症で悩んだ過去
自分は恥ずかしがりの性格だと、物心ついた時から感じていた。20年以上経った今でも覚えているのは、小学校1年生の時。道徳か何かの授業で「おかあさんといっしょ」という番組を見ていたのだが、番組の終了時にはエンディングソングが流れる。
そして、TVの向こうで子供たちが音楽に合わせて軽快に踊るのだが、僕の周りにいる教室の男子たちも続々と席を立って、教室の後ろで踊り始めるではないか。結局、僕以外のすべての男子がTVの子供たちを真似して軽快に踊っているのだが、いつも僕は恥ずかしくて席を立てなかった。そんなあるとき、隣に座っていた女の子が「あんたは踊らないの?」と詰めてきて、しぶしぶ教室の後ろに行き踊った記憶がある(あれはキツかった…)。エンディングが近かったため実際に踊った時間は10秒くらいだったが。
それ以外でも、女の子と話すときは緊張して顔が赤くなってしまうし、教室で目立つと真っ赤になってしまう。あるときは、ただ恥ずかしかっただけだったのだが、先生に「体調は大丈夫か??」と本気で心配されたこともある(苦笑)。
中学・高校は男子校だったので、女の子と話す機会もほとんどなく、恥ずかしがりも少しは治まってきたと思うが、赤面症であることは相変わらず。というか、正直現在でも治っていない。
ホストデビューへの道のり
そうこうして浪人の末なんとか大学に進学し、大学初の夏休みを迎え、前半はヨットに明け暮れるも、休みの後半になってくると基本的にやることがない。大学ってこんな感じで良いの?というくらい暇。もはやニートです。ちょっとこの生活は何とかしないとさすがにマズイな…と思い始め、じゃあ何をしようかと考えた結果、そろそろ恥ずかしがりをしっかり克服したいな、と思いように。外部の全く知らない人たちと繋がって、人とコミュニケーションするアルバイトを始めようと思い至った。
バーテンダーの面接
そして、まず良いなと思った仕事は、バーテンダー。バーテンダーは、ドリンクをつくるだけでなく、全く知らないお客さんと会話して楽しんでもらうことが仕事だと思い、これは自分の目的意識にまさに合致していると感じたためだ。バーに行ったことのない自分は、バーとは経営者やキレイな女性など、ハイソサエティの人々が集う場所だと(勝手に)確信していたのだ。
そして、横浜の某バーに面接に行った。そのお店は小規模ではあるものの、高級感があり、良い感じの雰囲気のバーだった。何を聞かれたのかあまり覚えていないが、結果的には、面接不合格。アルバイトの面接って落ちるんだな…(泣)という当たり前の事実を、始めて思い知った。
キャバクラの面接
しかし、このままではニート生活に戻ってしまうので、何とか女性と話せるようになりたい、その環境に身を置きたいと思い、次の応募したのは、キャバクラのボーイ職。時給が2,000円近くと、かなり高かったような記憶がある。
当時、僕はまだ20歳。当然キャバクラなんて行ったことはない。そこで気合を入れてスーツにオールバック姿で面接に臨むが、まだオープン前なので薄暗いにも関わらず、初心者にとってはお店の重厚感がハンパない。面接担当のオジさん(たぶんエラい人)には気に入っていただけたようで、面接途中で「これはイケるのでは…?」と感じたが、面接の終盤の質問、
「で、うちは少なくとも週3回は働いてもらわないとダメだよ?」
という一言。
正直、夜の時間を週3回費やすのは厳しいと思っていた。週2回、できれば週1回を希望していたので、思い悩んだ結果、「申し訳ございません、大学の都合上、週3回は難しいです…」と丁重にお断りし、差し出されたウーロン茶を一気飲みして面接の場を後にした。
いざホストクラブへ
せっかく面接に呼んでもらったのに、こちらからお断りするという申し訳なさと、結局ニート生活が続いてしまうという自分への不甲斐なさを感じたものだ。一方で、キャバクラのような、まだ自分が知らない世界、いわゆる夜の世界に興味が湧いていた。
そこで、コンビニの雑誌を立ち読みしてみると、ホストのお店とイケメンたちがたくさん掲載されている雑誌があるではないか。今から振り返ると、2005年当時はホスト全盛期。僕はTVをほとんど見ないが、当時はメディアでも脚光を浴び始めていた(詳しい方はご存知かと思いますが、ロマンスの陽生さんや、愛本店の城咲仁さんなどがカリスマホストとして有名だった)。
しかも、そのホスト雑誌をよく見ると、
「こんなブサメンの肩書きが主任?…ん??こっちの中身が薄っぺらそうな男は、常務取締役って書いてあるぞ…?」
と思うや否や、
「これは、もしやオレでもイケるんじゃね…?」
と直感してしまったのだ。そして、その雑誌を購入し、応募するお店を探し始めました。基準は、
- 新しくオープンしたお店(スタッフ同士の関係が比較的フラットだと思ったため)
- 多くのお客さんが来店しそう(チャンスが多いに越したことはない)
- あまり大規模ではない(他のスタッフとの競争に勝てないといけない)
という3点。
結果、新宿歌舞伎町の某C社に応募することにし、雑誌に記載されていた番号に電話し面接日時が決まった。
ホストの面接
面接は、Hydeに似たイケメンのお兄さん(肩書き:統括)が担当し、少し会話しお店のシステムを説明してもらった後、「よし、じゃあ頑張って稼げよ!」と言われ、翌日からそのホストクラブで働くことになった。
ちなみに、基本的にホストクラブでは源氏名を決めるが、勝手に決めてくれるものだと思っていたらそうではないらしく、その場の思いつきで決めてしまった(カッコ良い友達の名前の、漢字書き換えバージョン)。
ちなみに、この時僕は童貞です。高校で一瞬彼女がいたものの、深い関係にはならず、結局童貞のまま大学進学に至る、という状況でした。当時は、童貞とか関係ないっしょ!という勢いだった。
そして、結果的に、ホストでは週3〜4日、約7か月間働くことになったのだ。
【転職エージェント裏話】内定が出やすい求人案件はブラック企業なの?
転職活動の真っ最中、企業から内定(オファー)を受けたら嬉しいはずだ。自分のスキル、職務経験、人間性を評価してもらえたこととイコールだからだ。ただし、内定が出たら一歩立ち止まり、冷静に現在の状況を判断することは、とても大事である。
中途採用の面接回数は、何回くらい?
中途採用の面接回数は、企業によって異なるものの、一般的には2〜3回だ。特にベンチャー企業であれば2回(事業責任者+人事→社長など)が多く、大企業だと3回(人事担当者+現場担当者→事業責任者→管掌役員)もしくは4回になることが多い。
ベンチャー企業の選考回数が少ない理由の1つは、選考ステップを短くすることで早期に内定を出し、候補者をクロージングすることで、採用競合に取られないようにする、という点にある。新卒採用で、ベンチャー企業が大企業に先駆けて選考を開始する構図と似ている。
一方で、ベンチャーの中でも、スマートニュース社のように面接中に12人の社員に会わなければ内定が出ない、という企業もあるので、あくまでも一般論ではある。
なお、クロージングは、大企業であれば、オファー面談という形式で条件通知と候補者の疑問点を解消するための機会が設けられることが多く、ベンチャー企業は会食の形式で、ざっくばらんな話し合いの機会がつくられることが多い。ベンチャー企業では、カルチャーフィットがより重要視され、経営者を始めとして一緒に働く人の魅力が、入社のポイントになることが多いためかと思われる。
内定後にしつこい転職エージェントにはご用心を
さて、最終面接を通過し、いよいよ内定(オファー)が出たら、内定通知書(外資系企業では、オファーレターと呼びます)および雇用契約書が渡される。一般的には、雇用形態、給与、採用部署(ポジション)、休日、社会保険等、その他といった項目があります。まだ小さなベンチャー企業では決まったフォーマットがない場合も多く、私が代行して作成したことも何度かある(笑)。
内定が出たら、嬉しさのあまり、オファー面談の場で入社意思を即答される候補者の方がしばしばいらっしゃる。もちろん、志望意欲が極めて高い企業であれば、即答することも良いだろう。また、採用企業側としては、入社意思を即答してもらえることは、とても嬉しいことである。特に、採用人数をコミットし、自身の評価にダイレクトに影響してくる人事採用担当の方々は、喜びもひとしおだ。
そして、自身の営業予算(と、お給料)に直結する転職エージェントもまた、候補者に入社して欲しくて仕方ない状態となっている(笑)。内定が出るや否や連絡の頻度が格段に上がり、かつ内定先の企業を必死にオススメしてくる転職エージェントもいるが、候補者の人生を真剣に考えていない可能性が高い。その担当者の話は、話半分に聞いておく必要があるだろう。
内定が出やすい案件の特徴とブラック企業との関係
また、候補者のキャリアという観点から考えると、入社意思を即答することは大きなリスクがある。そもそも、内定が出やすい企業の特徴は、どのようなものだろうか?具体的には、面接1回で内定が出てしまう企業や、面接時間が15分などやたらと短いのに内定が出る企業、あるいは色々な転職サイトに情報が載っていたり、転職エージェントから次々と紹介される案件だ(笑)。
こういった案件は、緊急の募募であるため、採用ハードルが相対的に下がる。そして、上記のような状況では、緊急かつ大量に採用する場合が多く見受けられる。では、緊急に募集する背景は何だろうか?
まず、このポジションは、労働集約型の職務内容であることが予想される。人、つまり投下する労働力を増やせば増やすほど、売上が上がっているパターンだ。新規開拓や人材派遣の営業職や、受託開発会社のエンジニア職が典型例である。これらの案件は、とにかく人手不足なので、多少スキルが採用水準に達していなくても、すぐに内定を出す傾向があるのだ。
そして、大量採用を行い、またそれができる背景は、人材が定着しないため流動性が高く、またコモディティー化したスキルが求められる点にある。すなわち、ビジネスパーソンとしてのキャリアの将来性が見出しづらい環境だと推測することができる。また、流動性が高い環境とは、いわゆるブラック企業の特徴でもある。
すなわち、「長時間労働」「過度に肉体的・精神的ストレスのかかる環境」という特徴だ。もちろん、人生の一時期の修行として割り切るならそれも良いのだが、他に選択肢があるのであれば、じっくり比較検討した上で、意思決定するべきだと言えるだろう。
内定獲得後に、あたらめて冷静に案件を検討することが大事
採用ハードルが低い案件は、採用決定しやすく、仲介Feeが獲得しやすいという点で、転職エージェントからすると「オイシイ案件」ではあり、転職エージェントと面談すれば、おそらく積極的に勧めてくる担当者もいることだろう。しかし、候補者の方はしっかり吟味して、入社企業を判断する必要がある。
一方で、入社の返事を長引かせすぎると、入社意欲がないのかという疑念を呼んでしまいかねない。一般的には、1〜2週間以内の回答が求められるので、その点には注意しなければいけないだろう。
大手の転職エージェント以外では、 IT・Web業界ではギークリー 社が実績を出していることで有名。エグゼクティブクラスの案件も多数保有しているため、若手の方だけでなく40代のシニア層の方にもフィットする案件に出会えるかもしれません。IT・WEB・ソーシャルゲーム業界専門の転職支援
【転職エージェント裏話】転職エージェントの予算とKPI
今回は、転職エージェントの裏話として、転職エージェントの予算とKPIについて詳しく書こうと思う。転職を検討されている皆さまは、ぜひ本文を読んで転職エージェントと適度な距離感で付き合い、転職を成功させて欲しいと思う。
- 転職エージェントとキャンディデイトとの本質的なギャップ
- 転職エージェントにも予算がある
- 転職エージェントのKPI
- キャリアコンサルタント(CA)のKPI
- キャンディデイトのKPIの結論
- リクルーティングコンサルタント(RA)のKPI
- 転職エージェント業は大変であるが故に、キャンディデイトとの利益相反が起こり得る
転職エージェントとキャンディデイトとの本質的なギャップ
当たり前の話ではあるが、転職エージェント事業は営利企業が行う1つの事業なので、収益を上げる必要がある。エージェント事業を行う企業の経営者は、社員である転職コンサルタントに対して収益増大を期待している。ここで、往々にして、転職エージェントとキャンディデイト(転職候補者)の間に、ギャップが発生してしまうのだ。
どういうことかと言うと、転職エージェントとしては、キャンディデイトがクライアント企業に入社して初めて、クライアント企業から成功報酬の手数料(fee)が発生する。そのため、転職エージェントは、出来るだけ成約させたいインセンティブが働くのだ。
一方で、キャンディデイトは、人生において多くない転職の機会であるから、当然ながら慎重になっている。つまり、出来るだけ転職させたい転職エージェントと、出来るだけ転職したくないキャンディデイトとの間に、本質的なギャップが存在するのである。
もちろん、転職エージェントは、それを悟られないようにするため、表面上は気づきにくいが、転職エージェントの本質が顕著に表れるのは、その転職コンサルタントが勧めた企業に内定が出た時だ。
転職エージェントにも予算がある
前置きが長くなったが、そろそろ本題に入ろう。転職エージェントの予算は、どの程度の金額なのだろうか。私が見聞きした範囲では、月間予算は150万円〜300万円に落ち着くことが多い。私自身はキャリアの前半は200万円、後半は250万円だった。
この数字を達成することは、どの程度大変なのだろうか?当然、転職エージェントの会社によって予算達成の難しさは異なるものの、コンスタントに予算250万円/月(3,000万円/年)を達成できる転職エージェントは、全体のトップ10%に入ると考えられる。
リーマンショック前に年間2億円を売り上げた実績を持つコンサルタントにお会いしたことがあるが、それは正真正銘のトップコンサルタントだ。通常は、上記の範囲に落ち着くはずだ。
予算300万円/月を達成させるためには、何人のキャンディデイトを成約に結びつける必要があるのだろうか?これはキャンディデイトの年収、およびクライアントから受け取るFeeのパーセンテージ、およびクライアント担当(RA)とキャンディデイト担当(CA)が分離しているかどうかによって変動するが、ここでは一例として以下のように考えてみよう。
- キャンディデイトの年収…500万円
- クライアントから受け取る手数料(fee)…30%
- 担当業務…CAのみ(クライアント担当は、別のコンサルタント)
このキャンディデイトが成約した場合、この担当コンサルタントには、
500万円×30%×1/2 = 75万円
が売上として計上される。
単月の予算が300万円の場合、300万円÷75万円/人=4人 の成約が必要となる。
それでは、4人を成約させるために、どういった活動が必要なのだろうか?ほとんどの転職エージェントでは、この目標を達成させるための行動量を可視化させるために、ブレイクダウンした指標を設定している。
転職エージェントのKPI
営業職だけに限らず、その他の多くの職種にもKPIという指標が存在するかと思う。
言うまでもなく、KPIとはKey Performance Indicator(重要業績評価指標)、すなわち具体的な業務プロセスをモニタリングするために設定される指標のうち、特に重要なものを指している。当然、転職エージェントにもKPIは明確に存在する。
会社やコンサルタント個々人によって、数値の設計は若干異なるものの、概ね下記のような設計に落ち着くことが多い。
キャリアコンサルタント(CA)とリクルーティングコンサルタント(RA)、それぞれ分けて書いていこう。
キャリアコンサルタント(CA)のKPI
キャリアコンサルタント(CA)の典型的なKPIは、以下のとおりだ。
①スカウト数→ ②返信数→③面談数→④推薦数→⑤書類選考通過数→⑥最終面接数→⑦内定数→⑧決定数
それぞれ、順に見ていこう。
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①スカウト数
たとえば、大手転職サイトであるリクナビネクストにて、20代のIT系人材(webエンジニアや広告営業職など)に対してスカウトを送信した場合、平均返信率は0.5%程度だった(2014年頃)。今もそう変わらないか、むしろ人材獲得難のためさらに下がっていると思う。
したがって、1返信を獲得するために、200通のスカウトを送信する必要がある。そのため、1通1通時間をかけて作成する訳にもいかず、結果的に大量のコピペ文章でのスカウトが流通するようになってしまったのである。
スカウトを送信するにあたり、様々な検索条件で絞ることができる。たとえば年齢(生まれ年)や経験業界、経験職種、年収はもちろん、レジュメ内のキーワード検索なども可能だ。様々な検索条件を設定し、保存しておくことで、毎日新着のレジュメを見るわけである。
スカウト→返信率:0.5%
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②返信数
キャンディデイトから返信が来たら、転職エージェントは可及的速やかに、面談を設定しなければならない。なぜなら、他社の転職エージェントに先を越されてしまったら、自社で紹介できる案件が少なくなってしまうからである。
多くのキャンディデイトは、紹介された案件をその転職エージェントから応募するだろう。つまり、よほどのことがない限り、「先に紹介した者勝ち」ということになる。そのため、出来るだけ早いタイミングで面談を設定しようとするし、電話面談(通称、TEL面)でいち早く面談を済ませて案件紹介に入る場合もある。
また、ヒドい転職エージェントになると、まず求人票を送信して案件を紹介し、その後別の機会に面談を始める、という案件紹介ありきの人もいる。
一方で、それだけたくさんのスカウトを送信するとなると、スカウト媒体に登録しているレジュメを隅から隅まで熟読する訳にはいかない。そんなことをしていたら、時間はいくらあっても足らないからだ。したがって、レジュメはザッと読み、自社が保有する案件に少しでもマッチしそうであれば、いち早くスカウトを送信していく。
ただ、中には誤って完全にミスマッチな人にもスカウトを送ってしまう場合もある。往々にしてそういう人から返信が返ってくる場合が多いのだが、そのために面談を設定しても、お互いの時間が無駄となってしまう。
このような「消化試合」としての面談を設定しない場合の転職エージェントの対処方法として、次のような言い訳がある。
「紹介を予定していた案件が入社者決定により、クローズしてしてしまいました。現時点では、他に紹介可能な案件がないため、大変申し訳ございませんが、マッチしそうな案件が入り次第、改めてご連絡いたします。」
面談前にこのようなメッセージが届いたら、その転職エージェントは要注意だ。
さらに、候補者の経歴ではほぼ書類選考で落ちてしまうような、魅力的な案件をフックにスカウトする場合もある。このことを、業界用語では「釣り案件」と言う。
まず「釣り案件」で面談を設定し、実際には別の本丸の案件に応募してもらうことが目的だ。自身で明らかにマッチしていない案件がスカウトで届いた場合、「釣り案件」という可能性が高いため注意が必要である。
返信数→面談数は、80%〜90%程度
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③面談数
面談のスタイルは、転職エージェントによってやや異なるものの、基本的な流れは同じだ。
まず、面談前に、事前に受け取っているレジュメの読み込み→スキルマッチしそうな案件の準備、というステップがある。これがない転職エージェントは、キャンディデイトの時間を無駄にしており、正直ヤバい。このエージェントに紹介を依頼するのは避けたほうが良いだろう。
その後、実際の面談では、転職エージェントの自己紹介→キャンディデイトの自己紹介→経歴についての対話→今後のキャリアについての対話→希望条件の確認→案件紹介という流れになることが一般的だ。
紹介される案件の「数」と「質」は、転職エージェントの力量を計る1つのポイントとなる。
「数」については、一般的に、転職エージェントは、出来るだけ自社経由で企業に応募してもらいたいため、可能性のある選択肢は全てキャンディデイトに出す。そのため、売れ筋のキャンディデイト(20代・RAMP環境で開発しているwebエンジニアなど)は、30社も40社も案件が紹介されることになる。
当然、紹介案件数が多ければ多いほど良いエージェントなのかどうかは一概には言えない。キャンディデイトの希望に沿った提案であるかどうかが重要だ。
「質」については、以下のようなポイントから判断ができる。
- その案件がキャンディデイトの経歴や希望とマッチしているか
- その案件は、世間に出回っている案件ではないか(独占案件、非公開案件か)
- 転職エージェントは、その企業とリレーションが取れているか
案件の「質」については、別記事で詳細に解説したいと思っている。
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④推薦数
推薦数とは、1人のキャンディデイトから、転職エージェントが紹介した案件に応募してもらえる案件数を指す。
応募する案件が多ければ多いほど、自社で成約する可能性が高まるため、転職エージェントは様々な理屈を並べて、1社でも多くの企業に応募させようとしてくるだろう。
キャンディデイトが現職中である場合、同時に選考を進めるのはスケジュール的に3〜5社が限界ではないかと思うが、転職エージェントは「書類選考通過率は約30%なので、9社応募した方が良いです」などと言い、通過する可能性のある企業をとにかくたくさん受けさせようとするだろう。当たり前だが、自身の企業への志望度とスケジュールを考慮して応募するようにしたい。
また、転職エージェントは、クライアント企業にキャンディデイトを推薦する際、「推薦文(推薦コメント)」を書く。「推薦文」とは、転職エージェントがキャンディデイトと会話した結果、そのキャンディデイトがどのような点でクライアントの企業にマッチしているかを端的に述べた文章である。
内容は、概ね下記のようなものになるだろう。
<田中 一郎(タナカ イチロウ)様/26歳 男性>
大学卒業後、〜〜社(社名)に新卒入社。
エンジニアとして、法人向け人事給与Webアプリケーションの製品企画と開発に従事されています。
業務とシステムそれぞれの知識を元に、より顧客にとって使いやすいプロダクトを設計し、その実現のための体制づくりを得意とされています。
また、プライベートでは、スクリプト言語を用いたWebアプリケーションの開発にも携わられています。
この度、人事・給与という軸だけでなく、幅広い領域のサービス開発に携わりたいとの思いより、2月末で退職されることを決め、転職活動を始められています。
フロントエンド、サーバーサイドと合わせて開発するスキルを持ち、技術力の向上に積極的な方です。
また、第一印象も良く、柔和なコミュニケーションをされる方です。
【現在年収】500万円
【希望年収】450万円程
ぜひ、一度お会い頂けますと幸甚です。ご検討の程、何卒宜しくお願い致します。
ただ、時間がなくて中には適当な推薦文を書かれたりする場合もある。
また、推薦してもらうと約束したにも関わらず、実際は推薦されていない場合がしばしば起こる。具体的には、クライアント企業の担当者が別の人で、社内NGを出した場合と、その案件が「釣り案件」であり、スカウトで見せた案件は一応キャンディデイトに提示しないとバツが悪い場合だ。
いずれの場合も、あまりにもマッチしていない人を推薦すると、クライアント企業から転職エージェントの評価が下がってしまうため、結果的にはその企業に当該キャンディデイトのレジュメは送られないのだ。
なお、転職エージェントにとって、キャンディデイトに1社も応募してもらえない事は技量がない証だと見なされ、上司から問題視されるのだ。その後、ポジションの魅力的な説明の仕方のレクチャーを受けたり、いかに応募を即決してもらうかについてのロープレを受けたりする(笑)。
平均的には、1人のキャンディデイトから3社は応募してもらう(面談→推薦数300%)、というKPIが設定される。
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⑤書類選考通過数
これは転職エージェントによっても異なり、また応募する案件がどの程度キャンディデイトにマッチしているかにもより、一概には言えないが、平均的には書類選考通過率は、30%程度と言えるだろう。
リレーションがしっかり取れているクライアント企業であれば、「あなたが紹介してくれた人には全て会います」と言われることもあるので、その場合はほぼ100%書類選考通過する。
逆に難関企業であれば、10%以下ということも多々ある。乱暴に言ってしまうと、人気のなり企業の書類選考通過率は高い、ということになる。
また、転職エージェントによっては、書類選考通過率を高めるために、レジュメの添削を行う場合もあるが、ダメな転職エージェントは、そんなことよりもいち早くキャンディデイトを推薦して次のプロセスに繋げたいため、レジュメの添削は行わない。
推薦→書類選考通過率:30%
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⑥最終面接数
最終面接が何件発生したかも、KPIとして設定されることが多い。転職エージェント側では、そのクライアント企業は通常何回面接を行うかという情報は持っているし、当たり前ですが、内定を獲得するための最後の関門は、最終面接に通過することだ。
1次面接がいきなり最終面接だったという場合もあれば、企業によっては面接を5回も10回も行う場合もあるので、KPIとしてはかなりボラティリティの高い数値になるが、概ね20%程度に落ち着くのではないだろうか。
書類選考通過→最終面接設定率:20%
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⑦内定数
内定を獲得することはとても大事だ。ここで初めて、転職の主導権が企業からキャンディデイトに移るからだ。
逆に言えば、転職しようかどうか悩むのは内定を獲得してから初めて悩むべきであって、それ以前に悩んだところで、内定が出ていない以上、転職はできないので悩むだけ無駄ということになる。
内定率についても、これまた一概には言えない。企業によっては書類選考通過→内定率が50%、中には80%程度と極めて高い企業もあれば、10%以下の難関企業もある。
ただ、最終面接までいけば、少なくともスキル面のマッチは概ね問題ないという評価であるはずなので、主には本人の志向が企業とマッチしているかが問われることになる。
最終面接→内定率:50%
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⑧決定数
決定数とは、転職エージェントが紹介した企業に入社する意思を示したキャンディデイトの人数のことだ。また、転職エージェントが最も嬉しい瞬間だ(笑)。
転職エージェントとしては、入社が決定して初めてクライアント企業よりfeeが入り、営業数字がつくため、是が非でも勧めたクライアント企業に入社して欲しいのだ。
当然、キャンディデイトにとって第一志望の企業であれば、内定承諾を即答するだろうが、必ずしも第一志望の場合ばかりではない。
そのため、あの手この手を使って入社の承諾に向けて働きかけるのだ。僕が経験し、あるいは見聞きした範囲でも、
- キャンディデイトとのディナー(もしくはカフェmtg)を開催
- キャンディデイトに毎日電話
- 他社にも内定していて、他に選択肢があるのであれば、その企業と比較検討した場合のキャリアのメリット・デメリット参照表の作成
- クライアント企業との会食の設定
- クライアント企業へのオファー面談の打診、調整
といったようなことがある。
また、本人が承諾するつもりでも、奥様の反対に遭ったり(通称「嫁ブロック」)、退職する意向を現職の上司に伝えると、慰留を迫られて結局内定を辞退するといったケースもある。
僕もキャンディデイトの家に訪問し、奥様を説得したこともありますが、なかなか苦労した経験がある。また、もともとあまり興味のない会社だったという場合もあるので、必ずしも内定=決定とはなり得ない。概ね、内定→決定率は50%程度に落ち着くかと考る。
内定→決定率:50%
キャンディデイトのKPIの結論
以上を振り返ると、キャリアコンサルタント(CA)が1名のキャンディデイトを決定に結びつけるためには、
1決定→2内定→4最終面接→20書類選考通過→60推薦→20面談→25返信→5,000スカウト
となる。転職エージェントからのスカウトが洪水のように来るのは、こういった背景があるのだ。
冒頭の問いに戻ると、1人決定するために20面談が必要ということは、4人決定させるためには80面談必要となる。1か月の営業日が20日間だとすると、1日4面談をこなしていく必要がある。
CA業務専任で行っている転職エージェントであれば問題ないですが、追加でスカウトや日程調整などが加わってくるとかなりハードワークになってくる。
総合的に考えると、1か月間で4決定はハードルが高いため、年収が高いキャンディデイトに注力したり、またクライアント企業のfeeが高い案件を優先的に紹介したりするようになるだろう。
リクルーティングコンサルタント(RA)のKPI
さて、次は採用企業の窓口役である、リクルーティングコンサルタント(RA)のKPIを見てみよう。
①架電数→ ②アポ数→③案件獲得→④推薦数→⑤書類選考通過数→⑥最終面接数→⑦内定数→⑧決定数
※④以降は、前述のプロセスと対の関係にあるため割愛し、ここでは①〜③に絞ってお伝えしたい。
①架電数
転職エージェントが新規クライアントを開拓する最もオーソドックスな手段は、電話による営業である。
他にも、社長宛の手紙送付や、企業HPへの問い合わせフォーム入力、SNSを活用して社長や人事担当者へ直接アプローチするといった方法もあるが、転職エージェント自体に強いブランド力がない限り、基本的には電話営業がメインになってくる。
架電するためのリストを作成する必要があるが、原則としては、案件が顕在化している企業を探していく。
例えば、以下のような方法でリストを作る。
- 自社の採用ページに求人が掲載されている企業
- どこかの転職サイトに求人を掲載している企業
- どこかの転職エージェントのサイトに非公開案件として掲載されている案件から、企業名を推測(通称「逆検索」と言う)
リストを作ったら、あとはひたすら架電していく。何も事前情報がない場合だと架電→アポ率は3%、求人情報がある場合だと10%程度になる。
架電→アポ率:10%
②アポ数
採用企業に対してアポを取る際、重要なポイントがある。それは、窓口となる人の役職です。これがイチ人事担当者なのか、それとも社長など意思決定権者なのかによって、成約率は全く変わってくる。
ある程度の人数(50名程度以上)の規模の企業では、人事担当者を設置していますので、採用の窓口は人事担当者になることが一般的です。ただ、様々な手法を駆使して、意思決定権者を窓口にすることができれば、下記のようなメリットが期待できます。
- 選考ステップの簡略化
- 求める人物像の明確化
- 独占案件の依頼
よって、企業の窓口が誰かは、転職エージェントの力量を計る上での1つの指針となる。アポが取れれば、成功報酬型のfee体系の場合、ほとんどの確率で求人案件の依頼が入るだろう。
なお、RA専任で行っている場合、まだクライアント企業が少ない場合は、1か月に20件のアポを獲得することを課せられたりする。
アポ→案件獲得率:100%
③案件獲得
企業に初回で訪問して行うことは、大まかには以下の3点に集約される。
- 自社の紹介(どんな属性の候補者を抱えているのか、候補者を獲得する手段の紹介)
- 企業の理解(歴史、組織構成、ビジネスモデル、課題の把握)
- 現在の求人ニーズのヒアリング(ミッション、必要要件、想定年収、選考プロセス)
よほどの事がない限り案件の獲得はできるが、その場では「まさにこういうキャンディデイトが弊社に登録しています」などと調子の良いことを言ったものの、実際は全くおらず、その後その企業と音信不通になるということもある。
これは双方の時間を無駄にする典型的なダメなパターンだが、転職エージェントのRAは、アポ数がしっかりKPIとしてカウントされているため、まずはアポ獲得に全力を尽くすことになる。
転職エージェント業は大変であるが故に、キャンディデイトとの利益相反が起こり得る
いかがだろうか。総じて、転職エージェント業は楽ではないということが言えるかと思う。
1人のキャンディデイトが決定すると金額的には大きい一方で、1か月間で1人も決まらない、という悲惨な状況も起こり得る。もちろん僕も経験があるが、本当に居た堪れない気持ちになる(苦笑)。
そのため、キャンディデイトの本心は置いておいて、転職エージェント個人の営業数字を達成するための行動が優先されることが往々にして起こってしまうのだ。
このような実態を踏まえた上で、転職エージェントを上手く付き合っていければ、より良い転職に繋がるのではないかと思う。
なお、20〜30代のIT・Web業界の方々においては、大手エージェントの中では、求人数、エージェントの質の観点から、マイナビエージェント×IT が良いと思うので、まずはどんな案件があるのか、情報収集のために登録してみることをおすすめしたい。