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【書評】『ITビジネスの原理』 ビジネスモデルの原理と今後のITビジネスの世界観が分かる良書

 
本書は、マッキンゼー→iモードの立ち上げ→リクルート→Google→楽天(11社目)と、ITビジネスに「プラットフォーマー」として長く携わられている尾原氏の処女作である。内容としては、とても示唆に富み、体感値としてモヤモヤしていたものが理屈として言語化されていて、腑に落ちたという表現がぴったりする本だ。 その中でも、本書は以下の3つの視点から描かれているように思う。

①そもそも、どうやってビジネスでお金を生みだすのか?(従来)
②ITビジネスがもたらした、お金の生み出し方の変化(現在) 
③ITを活用した、今後のお金の生み出し方の変化(将来=本書のいう「第二のカーブ」)


    
①そもそも、どうやってビジネスでお金を生みだすのか?(従来)

・「(その商品を)安いと感じているところから仕入れて、高く感じているところへ売る」 
・「売ろうとしている商品」「その商品の価値が最も低い場所(仕入れ地)」「商品の価値が最も高い場所(消費地)」の三つを結びつけるマッチングが、ビジネスのキーになるのです


いわゆるアービトラージ(裁定取引)というやつで、本書では大航海時代の香辛料貿易(ヨーロッパにはないコショウをインドまで取りに行って、それを金と交換して多額の利益を上げた取引)を例に挙げている。インドではそこらじゅうに生えているコショウが、ヨーロッパでは希少な物だという点がポイントだ。


  ②ITビジネスがもたらした、お金の生み出し方の変化(現在)

・インターネットの最大の特徴は、空間(距離)的、時間的な制約なしに世界中を結ぶ 
・「点在する情報を一か所に集める」という作業は、インターネットがひじょうに得意とするところ 
・インターネット以前のビジネスは「モノを安く仕入れて高く売る」ものでしたが、インターネットのビジネスというのは「ユーザを安く仕入れて高く売る」ものと言える 
・世界中に散在しているユーザを一か所に集めて、そのユーザを金を出しても欲しいと思っている企業や人を結びつける、マッチングするのが、インターネットのビジネス 
・1.ユーザーのインテンション(意図)を先鋭化させて正しく把握する 2.そしてそのインテンションに基づいて最適なものを提示する という二つの仕組みをきちんと回すことが、インターネットのビジネスでは重要なことなのです 
・ITやインターネットは仕事を細切れにすることで価値を生み出すだけではなく、その細切れを集めることによって新しい価値を生み出し、普段使われていない部分を有効活用することができる


①のアービトラージの変化球版が、ITビジネスで起こっていることを示している。例えば、太陽光パネルを自宅の屋根に付けたいというユーザの情報は、ほとんどの人にとって興味はないが、パネルの販売会社・施工会社には喉から手が出るほど欲しい情報だ。そのマッチングサービスが、弊社のグリーンエネルギーナビである。また、クラウドワークスのようなクラウドソーシングも、この変化球の最先端事例として取り上げられている。


  ③ITを活用した、今後のお金の生み出し方の変化(将来=本書のいう「第二のカーブ」)

・日本というハイコンテクストな国は、こうした言葉ではない部分を楽しむ、隙間を楽しめるという文化がある 
・モノを買うというのは、ただ品物を買っているだけではなくて、その商品にまつわる物語を買っていたり、売っている人との関係性を買っていたりする 
・インターネットというのは、ハイコンテクストなものとハイコンテクストなものをダイレクトに結びつけることができるものだ 
・ハイコンテクストなコミュニケーションを加速するのが、ウェアラブルであり、ギガビッド・インターネット 
・ITやインターネットはもともと、自己実現のためであり、みんなが幸せになるためのものだった


本書の後半では、ITが生み出すコミュニケーションの変化に多く言及している。それは、言語→非言語への変化であり、たとえば写真(Pintarest)やスタンプ(Line)やウェアラブル(Google Glass)である。こういった非言語メディアは、文字よりはるかに多くの情報を伝えることができる。ITがより豊かな人間関係の構築を促進させるということを示唆している。井口尊仁氏との10分対談の中で、「かつては、「お金儲け」と「人を幸せにする」は二項対立だった」が、その時代は終わっているという言葉が印象的だった。 You tubeにもITビジネスのキーパーソンとの対談が多くアップされているので、こちらも合わせて見てみたい。