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離職率は、会社選択の基準の4つのうちの1つでしかない。


離職率を会社選択の基準にするという記事を拝読した。

記事の執筆者の尾藤氏は、離職率が高い企業は「労働環境が劣悪」で「人間関係が構築できない」の2つの要素があり、また「働くのなら、働き易い環境を選択することが重要」と述べており、「離職率が低い会社を選択することも一考だ」と結論づけている(結論とタイトルがマッチしていないが)。


僕の意見としては、結論から言えば、離職率という1要素に捕われて就職先・転職先を選択することは、「個」の市場価値を上げるという観点からは、リスクが大きいのではないかと考えている。

      

たしかに、離職率を気にする候補者は多いし、離職率が高い企業には、高いなりの要因が内包されている場合が多い。ただ、一言で離職率が高い企業といっても、2パターンあると言える。企業がコストをかけて、候補者の事前のスクリーニングをしっかり行っている少数精鋭企業と、そうでない大量採用企業だ。

たとえば、一時期、営業職の離職率が50%近くだった大手外資系ソフトウェアベンダーA社は、半期の目標売上数字が一定程度(高め)クリア出来なければ、基本的には即クビという状況だったそうだ。ただ、目標が達成できればそれなりのインセンティブが約束されている。これは、事前にオファーレターの段階で、OTE(On Target Earnings、売上予算100%達成した場合に受け取る報酬)という形式で、ベース:インセンティブ=70:30などと、ベース給与とインセンティブ給与の割合が明記されているためだ。

一方で、数年前の話だが、某大手営業会社B社の飲食店向けのシステム営業部隊は、深夜までにdailyの目標数値が達成できなかった場合、深夜から営業部隊が全員飛び込み営業をしなければならなかった、という話を伺った事がある。

 

A社は世界的なグローバル企業であり、その選考はハードルが高いことで有名だ。スクリーニングがしっかりしており、採用ハードルが高い少数採用の企業は、その環境で将来的なキャリアを鑑みて得難い経験がしやすいと言えよう。コンサルティングファーム等のプロフェッショナルファームは良い例だ。一方で、B社のような「大量採用→大量退職」の企業は気をつけた方が良い。その後のキャリアの伸びしろが疑問視されるためだ。


これらの企業は、離職率が高く、一見すると選択すべきではない企業だと言えるかもしれない。ただ、その判断基準は、自分がその組織に何を求めるかに依るのではないだろうか。「経験」なのか、「組織のブランド」なのか、「年収」なのか、あるいは「働きやすさ(時間、人間関係など)」なのか。だいたいこの4つに収斂されるはずだ。

 
そして、「働きやすさ」を唯一の検討材料として選ぶことはお勧めできない。居心地の良い環境で長年働く中で、いつの間にか「個」としてのバリューを発揮し続けることを忘れてしまいかねないからだ。尾藤氏が例に挙げた離職率が低い企業のご出身の方で、所属組織の業績が悪化して早期退職の募集に応募し退職したものの、行く先がなかなか見つからない、ということは現実に起こっている話だ。
 
 
重要な点は、離職率ではなく、離職した社員の「その後」である。その人自身がキャリアアップ、ステップアップしているのか?人材輩出企業と呼ばれる組織は、まさに「個」の市場価値を高めてキャリアアップしている例だと思う。



社員が会社にしがみついて生きていける時代は、もう終わりつつある。グローバル規模でシビアに競争していかなければならない時代に、そんな余裕のある組織は、今後ますます存在し得なくなるだろう。
 
最近、「ブラック企業」や「離職率」という言葉を用いて、表層的に企業をカテゴライズする人たちが多いように感じるが、こういった傾向には問題意識を感じている。