Candidate Experienceとは何か? Candidate Experienceの視点が採用に求められる理由
Candidate Experienceという言葉を聞いた事はお有りだろうか?アメリカのリクルーティング業界ではバズワード的に流行り始めている概念の一種で、Candidate Experience Awardというセレモニーなどもあるようだ。
本エントリでは、What、Why、Howの観点から、Candidate Experienceについて概要を捉えていきたいと思う。
What - Candiadte Experienceとは何か?
直訳すると「候補者体験」「候補者経験」となるが、やや意味不明になってしまうので、本エントリでは訳さずに置いておきたいと思う。Candidate Experienceという概念には、まだ決まった定義はなされていないようだが、僕なりの解釈をすると「候補者とのタッチポイントの1つ1つに価値を提供しようよ」というものである。なお、タッチポイント(コンタクトポイント)とは、「ブランドと顧客とのすべての接点」のことである。まぁ有り体に言ってしまえば、今流行りの「何ちゃら体験(経験)」の一種であると言えよう(ex. 現地体験(Airbnb)、乗車体験(Uber)など)。
*ちなみに、この「◯◯体験」の火付け役は、パインとギルモア著の『経験経済』ではないかと、僕は考えている。
Why - なぜCandiadte Experienceの観点が求められているのか?
背景には、大きく2つの要因があると考える。
1つは、優秀な人材獲得競争の激化していることだ。
マッキンゼー社が”War for Talent”を発表して久しいが、「優秀な人材の獲得のための熾烈な競争」はますます激化しているように思われ、まさに優秀な人材の獲得が企業の生存・成長に直結していると言える。このような状況では、企業(採用する側)が受け身の姿勢でいては、優秀な人材の採用はおぼつかない。優秀な候補者に対して、いかに自社を魅力を感じてもらえるか?という観点が必須になっているのだ。
2つ目は、Job Boardでの採用から、Passive Candidateへのアプローチへの潮流への変化である。
LinkedInを初めとするソーシャルリクルーティングツールが普及したことによって、いわゆる転職サイトに登録して積極的に転職活動をしている候補者(Active Candidate)のみならず、明確な転職の意思はないが良い機会があれば転職も検討している候補者(Passive Candidate)もターゲットにした採用が手軽に出来るようになった。ただでさえ転職意欲が低いPassive Candidateを惹き付ける(attract)ためには、自社の魅力が分かる情報提供および候補者との関係構築をしなければならない。
上記2つの背景から、候補者とのタッチポイント毎に、自社の魅力を伝えるというCandidate Experienceの発想・観点がフューチャーされているのではないかと考えている。
How - どのようにCandiadte Experienceを提供するのか?
これについては、具体例をご覧頂いた方が分かりやすいと思うので、Airbnbの事例 - How Airbnb Gave Its Candidate Experience A Makeoverを紹介したい。同社では、1年間で社員数が50人から500人へと急拡大した一方で、「候補者が見過ごされていた」と振り返っている。そこで、Airbnbは以下のように5つのステップに分けてCandidate Experienceを捉えている。
Step 1.理想的なCandidate Experienceのロードマップを描く
Step 2.リクルーターのコミュニケーションに投資する
・FAQやカルチャーが分かる動画を作成
・他社の面接を受けてみてフィードバックをもとに、選考プロセスを短くすべきということに至るらしい
Step 3.採用チームをトレーニングし、候補者中心のカルチャーを育てる
・候補者に検索された際に動機付けできるように、採用担当者のLinkedInプロフィールを更新させているらしい
Step 4.Web上での面接を調整する
・記事の内容が不確かだが、たしかAirbnbは、動画版エントリーシートのようなツールでスクリーニングをしていたと思う
Step 5.高く評価されたと候補者に感じさせる、特に見送りの場合は
・忙しい候補者の時間を貰った事に感謝する
・見送りだった場合は、メールを送った後に、フィードバックのために候補者を招待する
・一定の選考ステップまで進んだ場合は、Airbubのクーポン券を候補者に付与している!
以上、Candidate Experienceについて3つの視点から概要を記してみた。ただ、これは何も難しいことではないと思う。先日、企業の面接に行かれた候補者から僕が伺った話を紹介したい。その候補者はある企業の3回目の面接に臨まれていたが、受付の方に面接会場に案内される際、「何回もお足を運んで頂きましてありがとうございます。」と言われたそうだ。そのことで、企業への印象がプラスに働いたという。
AirbnbくらいにCandidate Experienceを徹底している組織はまだ少ないと思うが、候補者との何気ない会話だけでもCandidate Experienceを向上させることは可能だ。まずはすぐに出来る事から始めることが、War for Talentの時代を乗り越える端緒となり得るだろう。