sailing days

事業開発とキャリア開発が大好きなベンチャー起業家のブログです。

移転しました。

約3秒後に自動的にリダイレクトします。

離職率は、会社選択の基準の4つのうちの1つでしかない。


離職率を会社選択の基準にするという記事を拝読した。

記事の執筆者の尾藤氏は、離職率が高い企業は「労働環境が劣悪」で「人間関係が構築できない」の2つの要素があり、また「働くのなら、働き易い環境を選択することが重要」と述べており、「離職率が低い会社を選択することも一考だ」と結論づけている(結論とタイトルがマッチしていないが)。


僕の意見としては、結論から言えば、離職率という1要素に捕われて就職先・転職先を選択することは、「個」の市場価値を上げるという観点からは、リスクが大きいのではないかと考えている。

      

たしかに、離職率を気にする候補者は多いし、離職率が高い企業には、高いなりの要因が内包されている場合が多い。ただ、一言で離職率が高い企業といっても、2パターンあると言える。企業がコストをかけて、候補者の事前のスクリーニングをしっかり行っている少数精鋭企業と、そうでない大量採用企業だ。

たとえば、一時期、営業職の離職率が50%近くだった大手外資系ソフトウェアベンダーA社は、半期の目標売上数字が一定程度(高め)クリア出来なければ、基本的には即クビという状況だったそうだ。ただ、目標が達成できればそれなりのインセンティブが約束されている。これは、事前にオファーレターの段階で、OTE(On Target Earnings、売上予算100%達成した場合に受け取る報酬)という形式で、ベース:インセンティブ=70:30などと、ベース給与とインセンティブ給与の割合が明記されているためだ。

一方で、数年前の話だが、某大手営業会社B社の飲食店向けのシステム営業部隊は、深夜までにdailyの目標数値が達成できなかった場合、深夜から営業部隊が全員飛び込み営業をしなければならなかった、という話を伺った事がある。

 

A社は世界的なグローバル企業であり、その選考はハードルが高いことで有名だ。スクリーニングがしっかりしており、採用ハードルが高い少数採用の企業は、その環境で将来的なキャリアを鑑みて得難い経験がしやすいと言えよう。コンサルティングファーム等のプロフェッショナルファームは良い例だ。一方で、B社のような「大量採用→大量退職」の企業は気をつけた方が良い。その後のキャリアの伸びしろが疑問視されるためだ。


これらの企業は、離職率が高く、一見すると選択すべきではない企業だと言えるかもしれない。ただ、その判断基準は、自分がその組織に何を求めるかに依るのではないだろうか。「経験」なのか、「組織のブランド」なのか、「年収」なのか、あるいは「働きやすさ(時間、人間関係など)」なのか。だいたいこの4つに収斂されるはずだ。

 
そして、「働きやすさ」を唯一の検討材料として選ぶことはお勧めできない。居心地の良い環境で長年働く中で、いつの間にか「個」としてのバリューを発揮し続けることを忘れてしまいかねないからだ。尾藤氏が例に挙げた離職率が低い企業のご出身の方で、所属組織の業績が悪化して早期退職の募集に応募し退職したものの、行く先がなかなか見つからない、ということは現実に起こっている話だ。
 
 
重要な点は、離職率ではなく、離職した社員の「その後」である。その人自身がキャリアアップ、ステップアップしているのか?人材輩出企業と呼ばれる組織は、まさに「個」の市場価値を高めてキャリアアップしている例だと思う。



社員が会社にしがみついて生きていける時代は、もう終わりつつある。グローバル規模でシビアに競争していかなければならない時代に、そんな余裕のある組織は、今後ますます存在し得なくなるだろう。
 
最近、「ブラック企業」や「離職率」という言葉を用いて、表層的に企業をカテゴライズする人たちが多いように感じるが、こういった傾向には問題意識を感じている。
 

「自分のビジョン」は何か? - 転職先を考える前に考えるべき、たった1つのこと。


「井口さんはどうしてこの仕事をされているのですか?」

先日お会いした候補者から、面談の最後に余談的な会話の中で頂いた質問だ。

この質問に答える際はいつも、スティーブ・ジョブズの「Connecting dots」の話が頭に浮かぶ。もやもやする自分の考えを整理することが容易になるからだ。

結論から言えば、自分が人材ビジネスに取り組んだきっかけは、働きたいと思ったアイアンドシー・クルーズという組織がたまたま人材ビジネスを行っていたからであって、まったくの偶然でしかない。ただ、現在もそれに取り組んでいるのは、偶然ではなく、自分のビジョンに合致するからだと思っている。

    

「自分のビジョンを持つこと」について、古賀洋吉さん@yokichiのツイートはとても示唆に富んでいる。以下、長くなってしまうが、カジケンさんのNAVERまとめより一部引用する(ちなみに、僕のツイートもまとめに含まれていた!)。

非常に優秀な皆さんのMBAエッセイの方針にてよくある問題は、ビジョンがないことだ。「日本はこうあるべき。うちの会社はこうあるべき。おれはこう成長すべき。だからMBA」そんなの全部、当たり前なんだよ。なんでそれが自分にとって重要なんだよ。どういう風に死にたいんだよ。

 

実は、ほとんどの人はビジョンをもっている。そのビジョンが、何らかの普通ではない実績につながっている。だから評価されている。しかし、自分では自分のモチベーションを生み出したビジョンに気づいていない事が多い。

 

「うちの会社にはこういう事ができない、こういう人材がいないからMBA」とか、何を言ってるんだ。会社の弱点が満たされてふつうになりました、それが何だというのだ。そんなのどの会社でも重要だ。そんな問題点だれでも指摘できるわ。何かが君を突き動かしたときがあるだろう。まずそれを思い出せ。

 

何か情熱をもって取り組んですごい事をやったことが一度ぐらいあるだろう。なぜそんな事をした。なぜそれが重要だった。なぜあきらめなかった。なぜ他の人にはできないのに自分はできた。何が自分と他人の違いを生み出したのだ。何がその本質にあった情熱なんだ。何がビジョンなんだ。

 

自分を突き動かした瞬間の自分をもう一度つれてこい。そいつはすごいやつだ。そいつならすごい事ができる。すごいポテンシャルがある。どうでもいい事をしようとするからそいつは帰ってこないんだ。自分にとって大事な事をやるしか、その力を戻す方法はない。しかしそれはできる。自分を知る。

 

「日本経済は問題だ」「うちの会社はグローバルじゃない」「自分にはリーダーシップがない」。知るかそんな事。MBAなんていいんだよ。どう死にたいんだ。何をする気なんだ。もっと大きく考えるんだ。

 

すごかったときの君はすごい。そこの部分においては相当すごい。他の部分はすごくなくてもそこはすごい。ならばそのすごさならば実現できる無理そうな夢を描くんだ。その力があることはすでに証明されている。サラリーマンやってるから忘れただけだ。

 

自分の輝いてる瞬間を思い出すのだ。なぜ輝いていたと思うのだ。なぜ誇りに思うのだ。掘り下げろ。理解しろ。自分は誰だ。なんで他の人と違うんだ。何が君のビジョンなんだ。

 

「うちの会社はグローバルじゃなくて」そんなスケール小さい話、知らんよ。会社みたいな小さい単位でモノを考えてるからどんどん小さく考える事になるんだよ。自分は誰なんだ。何ができるんだ。どう役に立てるんだ。何が夢なんだ。

 

君はすごいんだよ。いつもはすごくないけど。でもすごいときもあったでしょ。そのすごさを精一杯伸ばして、その両手いっぱいで抱えられないぐらい、無理そうな夢を言ってみろよ。

 

実現できなくてもいいんだよ。失敗するリスクが高いものだけを夢とか可能性というんだよ。でも君がどういう風に生きたら幸せに輝けるかは誰にも変えることはできない。それが君らしい生き様だからだ。その輝きを伸ばそうともがく姿なくして、MBAもクソもあるか。

 

そのだれが言っても正しそうなプランはダメだ。そんなもん、君の人生じゃなくて他人の人生の話だから説得力があるんだよ。もう一度自分が誰だか考えて、魂こめて帰ってきてくれ。話はそれからでしょ。



僕が過去に情熱をもって取り組んだ事の1つは、大学時代の受験予備校でのアルバイトだ。4年間にわたって、主にSFC受験生に対して、小論文の添削やレクチャー、また生徒の進路相談を受けていた。

特に小論文は、相当な数の添削をこなしていた。過去に数えた事があるが、たしか年間500枚を超えていたと記憶している。提出期限前日の徹夜はしょっちゅうで、今だから言える話だが、渋滞時に運転していた車でも添削を行っていたくらいだw

正直なところ、体力的よりも精神的にかなりキツく、ノイローゼ気味になることも良くあった。枚数は多かったが、クオリティを落としたくなかったため手は一切抜かなかったからだ。居心地の良い空間(主にスタバ)で添削することが、少しでもストレスを緩和するための、数少ない手段だった。

ただ、仕事を辞めたいと思った事は一度もなかった。

「そこまでしてなぜ続けたのか」と自問自答したことがあり、また今もたまに振り返ることがある。その度に思うことは、「『自分の仕事が他の人に役立っている』という実感を感じられるから。そしてその仕事は、その人の人生にとって大きな影響を与え得るから。」ということだ。


今は、転職という、人生の重要な意思決定のサポートに取り組んでいる。学生時代に予備校で取り組んでいた事と、本質は何も変わっていないのだと思う。たまたま出合った仕事だが、やりがいのある仕事であり、たしかに当時と今は繋がっている(Connecting dots)と実感するのだ。


現在進行形で転職を考えている方だけでなく、将来的に考えている方も、目先の年収が50万円upするとか、残業時間云々ではなく、ぜひ「自分のビジョンは何か?」を軸にキャリアを模索されることをお勧めしたい。

転職エージェント業界の「おいしい案件」とは何か?

世の中には大量の求人案件が出回っているが、エージェントから見て「良い案件」、通称「注力案件」または「おいしい案件」とは何だろうか。
 
「おいしい案件」とは、売上(=採用決定)に繋がりやすいと思われる案件だ。その観点から、①案件の魅力度 と ②採用ハードルの低さ という2軸で分けたマトリクスで整理できると考える。
 
 
 

    

①案件の魅力度の構成要素は、主なところでは以下の通りだ。
 
  • 企業のブランド、イメージ
  • 収益状況
  • ポジション、職務内容
  • 想定年収

 

②採用ハードルの低さは、次の通りである。
 
  • 採用要件の厳格性
  • 選考プロセスの長さ
  • 採用ニーズの喫緊性

もちろん、案件の魅力度が高く、かつ採用ハードルが低い案件がベストなのだが、当たり前だがそんな案件はなかなか出てこない。イメージとしては、「大手総合商社が年収1,200万円で大量採用します!」というようなものだが、実際は採用ハードルが劇的に高いことは言うまでもない。
 
むしろ、案件の魅力度と採用ハードルの低さは、反比例しやすい傾向にある。分かりやすい例で言えば、世間の言ういわゆる「ブラック企業」が大量採用しているケースだ。極端なケースだと、「若くて元気な人であれば、誰でも採用します」というものだ。採用ハードルは低いが、案件の魅力度が低いため、候補者受けが悪く、結果的に決まりづらい案件となる。
 
一番ダメな例としては、企業の認知度がなく(もしくは世間の印象が悪く)、特筆すべき実績や優位性もないのに、やたら採用ハードルが高い案件だ。「うちはMARCH以上でないと採らない」などど上から目線の人事がいそうな企業である。採用力がない企業とはこの事だ。
 
 
ここで重要なポイントとしては、実は上記2軸の構成要素は、ほとんどが可変要素であるという点だ。さすがに企業の業績などは不可変要素だが、たとえばネット上にマイナスの企業イメージの情報が掲載されていたら、現在の実態は異なることを事実ベースでお伝えすれば良いし、また厳格すぎる採用要件に対しては、「そんな人材は市場にごく僅かしかいない」とクライアントに伝え、要件を緩和して頂くことを提案すれば良い。つまり、いかに案件の魅力度を高め、かつ採用ハードルを下げるかが、エージェントとしての力量が問われるシーンである
 
 
大手のエージェントにありがちなのは、「案件の魅力度」はCA(Career Adviser=候補者担当)、「採用ハードルの低さ」はRA(Recruiting Adviser=企業担当)と、役割を分担するケースが多いが、相互に密な連携が取れている場合を除いて、マトリクスの右上に持っていくことは困難だと言えよう。
 
皆さんがエージェントに出会う機会があったら、その担当者が上記の動きを行っている形跡はあるか、ぜひチェックしてみて頂きたい。

ワークライフバランスの論点は、業務時間の長さについてではないと思う。

仕事柄、候補者(転職希望者、または中長期的に検討されている方)にお会いする機会が多くあるが、面談の中でワークライフバランスの話になることがしばしばある。

ワークライフバランスというと、一般的には「業務時間」の長さについて言及されることが多い。残業時間の長さであったり、休日に仕事が発生するかどうかだ。

面談での話のパターンとしては、大きく以下の2つに分かれる。
    

①現在の仕事が忙しすぎて身がもたないため、中長期的に働ける環境を探している
②とにかく残業は嫌なので、出来るだけ働く時間を短くしたい

僕がお会いする中では、前者は、コンサルティングファーム在籍者やベンチャー企業を中心とした営業職の方に多い印象を受ける。こういった方々の多くは、平日は終電近くは当たり前、土日も業務時間を割く事も辞さない、という状態だ。これでは身がもたないし、知識のインプットの時間が取れないので、平日は終電帰りでも良いがせめて土日は休める環境を探してる、という主張だ。

一方で、後者は、会社の平均残業時間や勤務時間、勤務地といった情報を特に気にされている。また、スタートアップは忙しくなりがちで、かつ安定しないとの理由により敬遠される方が多い。


ところで、転職先を検討するにあたって、ワークライフバランスは検討要素の1つでしかない。さらに、ワークライフバランスとは、業務時間のことだけを指すものではない。

この点で、クライアントである某日系コンサルティングの幹部の方が指摘されていたことが示唆深い。その方が言うには、「ワークライフバランスとは、『仕事』『休暇』『年収』の3つの要素をいかにバランスさせるかが論点だ」とのことだ。なるほど、休暇を重視して仕事を選べば、往々にして、年収は低くなりがちだ。この3つを高い次元でバランスさせるポジションは、率直に言えばかなり少ないと言えるだろう。20代〜30代前半の方向けのポジションは、特にそうだ。

 

転職市場において、年収とはその人材が有するスキルの価値であり、また労働市場での需給関係から相対的に決まるものである。高い年収は、営業であれば高い実績、エンジニアは高品質のプログラミング、もしくはPM能力、あるいは企画職であれば会社業績upに繋がる戦略立案など、いずれも高付加価値の対価として得られるものだということだ。

ワークライフバランスを主張する方の共通する傾向としては、中長期的な視点でこの3つを高い次元でバランスさせるための転職ではなく、短期的な視点で休暇を重視する傾向が強いということだ。この場合、たとえば40代、50代になって自社の業績が悪化し、いざ改めて転職を試みようとしても、ポジションが非常に限定されてしまうことが危惧される。組織はピラミッド型になることが多く、エグゼクティブ・管理職もしくはスペシャリストとしての採用が期待される40〜50代のポジションの数は、20〜30代と比較して圧倒的に少ないからだ。


ワークライフバランスの3要素という点で参考になる動画がある。イーロン・マスクのインタビューだ。

If other people are putting in 40 hours in a week, and you're putting in 100, …, you will achieve in four months, what it takes them a year to achieve.


彼の「休暇」がどうであるかは不明だし言及しないが、動画の前半で述べられている「自分が高い価値を出せる領域にフォーカス」し、仕事に多くの時間を割いて自己のバリューを高めていくことで、結果的に年収が高まるのだと言えよう。

ぜひワークライフバランスを、「仕事」「休暇」「年収」の3つの要素で、中長期的に捉えることをお勧めしたい。

Beach Boysのキャリア論 〜親愛なるK先輩へ〜

ビーチボーイズというドラマをご存知だろうか。1997年に放送された、反町隆史と竹野内豊が主演の、言わずと知れた夏の月9の名作である。各界に多大な影響を与え、多くの信者が「広海」と「海都」の生き方に熱狂したが、何を隠そう、自分もその1人である。(以下、ネタバレあり)



    どのくらい影響を受けたかと言うと、12話まである同作をこれまでに4回程見ているので、自分の人生を丸2日間つぎ込んでいる位だ。それだけではなく、大学ではビーチボーイズを意識していた訳ではないものの、結果的にヨットを4年間続け、年間100日は海で過ごすことになった。さらに、新卒でNPOに就職するという謎の行動をとるに至る(しかもすぐ辞める…)。


最近、改めて12時間を投資して、ドラマをYoutubeで見たわけだが、見たくなったのには理由がある。自分が転職を支援させて頂いた「K先輩」と海都が重なったからだ。


海都は、元々エリート商社マンであったが、仕事のミスをきっかけに、休暇をとるため民宿「ダイヤモンドヘッド」で短い夏休みを過ごした。その後仕事に復帰して自身がリードするPJのコンペを獲得したものの、思うところがあり退職し、本格的な「夏休み」をダイヤモンドヘッドで過ごすことに決めた。


一方でK先輩は、大学卒業後、大手外資系コンサルファームに入社し、数年を経て、学生の頃からやりたかったブランディングのスペシャリストになるため、転職活動を開始した。紆余曲折はあったものの、結果的には僕のクライアントである某ブランドコンサルファームに転職された。未経験でありポテンシャル採用という側面も多分にあったため、年収は約半分になっての転職だった。

後から内情を把握したのだが、そのクライアントは強烈なトップダウンの組織で、社長が絶対的な存在であり、離職率も低くなかったようだ。もちろん、スキルや実績は国内外から高く評価されている実力者であることは確かだが、K先輩としても、トップからの強烈なプレッシャーに体調を崩し、精神的にも参ってしまい、近々退社されることが決まっている。その後は、すぐにどこかに転職するのではなく、しばらく地元に帰って、しっかりリフレッシュしてから東京に戻ると聞いている。


海都が退職するに至った心境を読み解くにあたって、『ハーバード流キャリアチェンジ術』の内容が示唆深い。同書では、「分析して計画を立てて行動しする従来の手法の限界を示し、”試し学ぶ”課程を繰り返すことによって、アイデンティティの修正を伴う本当に満足できるキャリアチェンジが達成される」という点を指摘している。海都は有給休暇を取得してダイヤモンドヘッドに「客」として生活し、そこで広海という自身とまったく違うタイプ・生き方をする男と出会う。その後、復帰して仕事で成功したにも関わらず、海都がなぜ退職してまでダイヤモンドヘッドに「夏休み」を過ごすことにしたのかは、彼自身もずっと説明できていなかったが、最終話で広海に次のように語っている。

俺が何でここに来たか分かる?俺はさ、アンタを見ていようと思ってここに来たんだよ。
アンタと出会ってさ、何があっても「いいじゃん夏なんだから」とか言って、「あーこういうヤツも世の中にいるんだなー」と思ってさ。 悔しかったんだよ、俺はすごい。アンタ見てて。アンタはさ、俺の知らない人生知ってるような気がしてさ。だから、俺もね、俺も経験してやろうと思ってさ。
正直言うと、すっごい怖かったよ、俺。だって全部ゼロになっちゃうんだからさ。
でも、今だから言えるんだけどさ、それはそれで良かったなと思っているよ。 
もう何があっても怖くないし。いつだってゼロからやり直せる自信はあるからさ、俺。


アイデンティティの修正とは、必ず葛藤が伴うものだ。自己のこれまでの価値観・生き方を変容させるものだからだ。日々の仕事の中で、気づかないけれどなんとなくモヤモヤしていた想いが、広海やダイヤモンドヘッドの人々と出会ったことで、色々な気づきを得て、少しずつ顕在化してきた。「アンタを見ていようと思った」のは、自分1人では抜け出せない迷路にいるなかで、広海を「明かり」のような存在だと感じたからではないだろうか。


K先輩、広海が「夏休みは、自分が終わりだと決めるまで終わらない」と言っていましたよ。今回の転職が、K先輩の人生にとってプラスだったのか、直接聞く勇気はまだありません。「夏休み」を使ってゆっくり振り返ってみて、この会社での経験がこれからのK先輩の人生にどう影響するのか、またいつか教えてください。

「優秀な営業マン」とは何か?について考えさせられた、スーツ屋での体験談。


先日、スーツ用のワイシャツが欲しくなり、たまたま近場のスーツ屋に足を運んだ時のことだ。

パステルピンクでちょっと高級っぽく見える物が欲しいと思っており、色や模様、値段を中心にシャツ売り場を2、3分程見ていた後、「このシャツにしよう」と思って少し離れた位置から僕を見ていた店員に声をかけた。

井口:「すみません…」
店員:「合いません。」
井口:「えっ?」
店員:「胴回りの幅と袖の長さが合いませんね。」

話によると、自分が手に取ったシャツが置いてある列の商品は、胴回りの幅が大きく作られているためサイズが全く合わないらしい。たしかに、僕は痩せ型であり、かつ首は細長く、さらに腕は非常に長い。かなり特殊な体型?であるため、なかなかサイズがぴったりの服がなく、袖に合わせると胴回りがぶかぶかになり、胴回りに合わせると今度は袖がかなり短くなってしまうのだ。これまで購入した多くの店では、強くそのことを指摘してくれる店員がいなく、結果的にサイズが合わないシャツを購入してしまっている(だいたい袖が短くなる)。

その後、この店員は比較的自分のサイズに近しいシャツを案内してくれたが、胴・袖がフィットしても今度は首回りが合わないということで、結局「うちにはお客さんのサイズに合うシャツはありませんね。他の店でも、オーダーメイドしないとないと思います。」という話になった。店に入ってから、わずか5分程度だ。

結局、その店員には(無駄な買い物を回避できたということに対する)お礼を伝えて何も購入しなかったのだが、その後、僕は大して必要のなかったネクタイをその店員から購入している。


前置きが長くなったが、優秀な営業マンとは、すなわち「信頼に値する営業マン」なのだと思う。そして、神田昌典先生も言うように、「お客が<営業マンを>を信頼できると思うのは、十中八九、断られたとき」なのである。

この店員は、見込み客に対する距離感、お客の時間・お金を無駄にしないための配慮、そして一瞬でお客のニーズにフィットする商品を提供できるかどうかを見抜く職人技、これらを備えていたのだと、僕は思う。某マ○イの店員とは大違いである! 

勝間和代さんの「断る技術」を連発すると痛い(イタい)目に合いそうだが笑、自分も、クライアントやキャンディデイトに「断る」ことを通じて信頼を得られればと思う。

【書評】『ITビジネスの原理』 ビジネスモデルの原理と今後のITビジネスの世界観が分かる良書

 
本書は、マッキンゼー→iモードの立ち上げ→リクルート→Google→楽天(11社目)と、ITビジネスに「プラットフォーマー」として長く携わられている尾原氏の処女作である。内容としては、とても示唆に富み、体感値としてモヤモヤしていたものが理屈として言語化されていて、腑に落ちたという表現がぴったりする本だ。 その中でも、本書は以下の3つの視点から描かれているように思う。

①そもそも、どうやってビジネスでお金を生みだすのか?(従来)
②ITビジネスがもたらした、お金の生み出し方の変化(現在) 
③ITを活用した、今後のお金の生み出し方の変化(将来=本書のいう「第二のカーブ」)


    
①そもそも、どうやってビジネスでお金を生みだすのか?(従来)

・「(その商品を)安いと感じているところから仕入れて、高く感じているところへ売る」 
・「売ろうとしている商品」「その商品の価値が最も低い場所(仕入れ地)」「商品の価値が最も高い場所(消費地)」の三つを結びつけるマッチングが、ビジネスのキーになるのです


いわゆるアービトラージ(裁定取引)というやつで、本書では大航海時代の香辛料貿易(ヨーロッパにはないコショウをインドまで取りに行って、それを金と交換して多額の利益を上げた取引)を例に挙げている。インドではそこらじゅうに生えているコショウが、ヨーロッパでは希少な物だという点がポイントだ。


  ②ITビジネスがもたらした、お金の生み出し方の変化(現在)

・インターネットの最大の特徴は、空間(距離)的、時間的な制約なしに世界中を結ぶ 
・「点在する情報を一か所に集める」という作業は、インターネットがひじょうに得意とするところ 
・インターネット以前のビジネスは「モノを安く仕入れて高く売る」ものでしたが、インターネットのビジネスというのは「ユーザを安く仕入れて高く売る」ものと言える 
・世界中に散在しているユーザを一か所に集めて、そのユーザを金を出しても欲しいと思っている企業や人を結びつける、マッチングするのが、インターネットのビジネス 
・1.ユーザーのインテンション(意図)を先鋭化させて正しく把握する 2.そしてそのインテンションに基づいて最適なものを提示する という二つの仕組みをきちんと回すことが、インターネットのビジネスでは重要なことなのです 
・ITやインターネットは仕事を細切れにすることで価値を生み出すだけではなく、その細切れを集めることによって新しい価値を生み出し、普段使われていない部分を有効活用することができる


①のアービトラージの変化球版が、ITビジネスで起こっていることを示している。例えば、太陽光パネルを自宅の屋根に付けたいというユーザの情報は、ほとんどの人にとって興味はないが、パネルの販売会社・施工会社には喉から手が出るほど欲しい情報だ。そのマッチングサービスが、弊社のグリーンエネルギーナビである。また、クラウドワークスのようなクラウドソーシングも、この変化球の最先端事例として取り上げられている。


  ③ITを活用した、今後のお金の生み出し方の変化(将来=本書のいう「第二のカーブ」)

・日本というハイコンテクストな国は、こうした言葉ではない部分を楽しむ、隙間を楽しめるという文化がある 
・モノを買うというのは、ただ品物を買っているだけではなくて、その商品にまつわる物語を買っていたり、売っている人との関係性を買っていたりする 
・インターネットというのは、ハイコンテクストなものとハイコンテクストなものをダイレクトに結びつけることができるものだ 
・ハイコンテクストなコミュニケーションを加速するのが、ウェアラブルであり、ギガビッド・インターネット 
・ITやインターネットはもともと、自己実現のためであり、みんなが幸せになるためのものだった


本書の後半では、ITが生み出すコミュニケーションの変化に多く言及している。それは、言語→非言語への変化であり、たとえば写真(Pintarest)やスタンプ(Line)やウェアラブル(Google Glass)である。こういった非言語メディアは、文字よりはるかに多くの情報を伝えることができる。ITがより豊かな人間関係の構築を促進させるということを示唆している。井口尊仁氏との10分対談の中で、「かつては、「お金儲け」と「人を幸せにする」は二項対立だった」が、その時代は終わっているという言葉が印象的だった。 You tubeにもITビジネスのキーパーソンとの対談が多くアップされているので、こちらも合わせて見てみたい。

高収益Webベンチャーのスーパーエンジニアに聞いた、良いリーダーの3つの条件

先日、高い技術力で有名な、某Web系ベンチャー企業で活躍中で、以前より懇意にさせてもらっているスーパーエンジニアと呑む機会があった。

その方は、現在はエンジニアとしてコードを書かれているが、それまでは実質的なCTOとして、サービス企画・開発・マネジメント全般に携わられていた経験を有している。

ざっくばらんに色々話したのだが、たまたま話の途中で、「良いリーダーとはどんな人か?」という話題になったのだが、とても興味深い内容だったので忘れないように書き残しておこうと思う。

彼曰く、優れたリーダーには3つのポイントがあると言う。

  1. ブレない軸を持つ
  2. 謙虚で勉強熱心
  3. 根っからの明るいタイプ



1に関して、変化の速いインターネット業界であるから、戦術の部分では朝令暮改あることも当然だ。ただ、そもそも何に向かっているのか、様々なオプションを検討する中で、何を意思決定の判断軸とするのかといった点ではブレてはいけない。チームメンバーが疲弊しフラストレーションが溜まり、信頼を失ってしまうからだ。

2については、事業責任者として、自分の専門外を事柄を理解するよう努めるということだ。
たとえば、技術を知らないリーダーも、エンジニアがどういった思想で何に取り組んでいるのか、少なくとも理解しようと心掛けることが重要だとのことだ。

3は、その人がいると場の雰囲気が明るくなり、その人の周りに人が集まり、メンバーをポジティブにさせるということだ。リーダーは、決して愚痴やネガティブな印象を見せてはいけない。


なお、僕は、UEIの清水社長がブログに述べられていた「優れたリーダーの条件は、結果を出すこと」ということに影響を受けていることを伝えたら、たしかにその通りだとの返事があり、そこからリーダーは先天的(資質)か、後天的(経験)という議論が始まったが、長くなってしまうので本エントリでは割愛したいと思う。

モバイルリクルーティングの時代

THE HISTORY OF MODERN RECRUITING
imomentou社
The History of Modern Recruiting

興味深いグラフを見つけたので共有。

左図のインフォグラフは、主にモバイル(というかスマートフォン)を活用したリクルーティングソリューションを提供するスタートアップである、iMomentous社によるものだ。

リクルーティング手法の時代の変遷が分かりやすく記されているが、特に興味深い点は、最下部の「The Mobile Era(モバイルの時代)」という箇所内の数字部分だ。

「求職者の間でモバイルが採用される速度は、雇用者側が提供するソリューションをはるかに超えていた。これは変化している。」とし、具体的には、以下のとおり。

・フォーチュン500社が採用ページを(モバイル)最適化する割合…13%
・モバイルからのジョブポータル(ジョブボード)サイトへのアクセス割合…20%
・モバイルからLinkedInへアクセスするユニークユーザーの割合…23%
・モバイルリクルーティングの年成長率…25%
・2017年までの世界中でのトラフィックの成長率…300%
・2912年Q4での、自然検索と直接訪問者の割合…20%


正社員転職市場の市場規模は、約1,900億円あると言われている。今後、いかにスマートフォンで使いやすい転職支援サービスを創るかが、シェア拡大において肝になることは確実だ。

某上場企業の人事責任者から教わったWeb業界ポジショニングマップが秀逸【転職活動に有効】

 

Web系企業 ポジショニングマップ

先日、極めて高い利益率を誇る某Web業界の巨人に訪問し、人事責任者の方からざっくばらんにお話を伺う機会があった。その際、弊社の優秀なコンサルタントからの「D社やK社といった技術力の高い企業との立ち位置の違いは?」という質問が引き金となり、左図のようなポジショニングマップを見せて頂いた。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(特に)何を重視するかという軸で、売上かユーザーか、また組織のカルチャーの軸としてロジカル系かパッション系か、という切り口で分けるというものだ。この図に企業を大まかにプロットしてみると、下記のようになる。
 
各セグメントの特徴として、
 
①売上重視・パッション系は、体育会系、和気藹々、営業会社的というイメージだ(あくまでイメージ)。
 
②売上重視・ロジカル系は、いかにユーザーに多く課金させるか、ガチャとか射幸心煽って良い作戦じゃないか?というイメージ。
 
③ユーザー重視・ロジカル系は、ユーザーの視点にたって、長く使ってもらえる良いサービスって何だろうか?ということを緻密に考えているイメージ。
 
 
④ユーザー重視・パッション系は、いかにユーザーに「面白!」って思ってもらえるか重視だ(イメージ)。
 
このポジショニングマップが秀逸だと思った点は、採用競合からの口説き方に使える点、および自社にフィットしそうなタイプの人材が見つけやすい点だ。
 
それぞれの軸(特徴)には、何らかのメリット・デメリットが内包されているはずだ。たとえば、売上重視の企業は、「ビジネスセンスを磨ける」「稼げる」というメリットもあれば、「本当に世の中(人)の役に立っているサービスを提供しているのだろうか?」というネガティブな見方もできる。
 
候補者を口説く際、そういったデメリットを逆手にとって、「うちはそうではないですよ」と伝えることでフックをかけることができる。
 
また、別の見方としては、対極にある象限(①・③および②・④)は、そもそもフィット感が低いと言える。実際、③にあるその巨人は、R社出身者とはまったく合わないらしい。
 
こういった地味だけど切れ味の良いマトリクスを思いついた人事責任者は、すごい人だと思った。